約 525,944 件
https://w.atwiki.jp/roborowa/pages/325.html
真っ黒焦げの凶暴な卵(4) ◆2Y1mqYSsQ. □ 「乾坤圏、ごめんね」 「……帰ったときに修理させる。今は片方が使える状況に感謝だ」 ナタクはそれだけいって、乾坤圏だけをPDAへ収めた。他の支給品はいらないらしい。 生体センサーなんて便利なものもあるのだが、なんとなく没収するのは気兼ねがするためギンガに持たせたままだ。 早くゼロやチンクと合流したいのだが、これからどうしようかと迷っていた。 とりあえずギンガを運ぼうと、身体を持ち上げた。 「ドラス、なんなら俺がその女を運ぶぞ」 「いいんだ、ギンガお姉ちゃんが生きているって、この手で実感したいから」 「そうか」 ドラスはギンガを背負いながら、どこか達成感に包まれていた。 疲労した身体に、風が心地いい。前では気づかなかったことだ。 「ごめんな……さいね。重いでしょう?」 「お、起きたの!? は、始めまして。僕は…………」 「大丈夫。ちゃんと…………戦った時の記憶もあるから……」 もぞもぞ、とギンガはドラスの背中で後悔しているような呟きをする。 その声にドラスは聞き覚えがあった。いや、少し前の自分の声と一緒だ。 ドラスはどう声をかけていいか、迷った。 「起きたなら聞かせろ。なぜ俺たちを襲ってきた?」 「ナタク、後でいいでしょ~」 「この女は俺に断りもなく乾坤圏を使ってきた」 「も~」 パワーアームを向けるナタクとドラスのやり取りを聞いてか、ギンガがくすくすと笑い始めた。 何がおかしかったのかドラスには分からないが、ギンガが笑ってくれるなら何でもよかった。 「ドラスゥゥゥゥゥゥゥゥッッ!!」 自分が犯した罪が、目の前に現れるまでは。 スバルは凱に言われた言葉を反芻しながらも、ドラスに受けた傷を思い出した。 右肩が痛む。スバルの右腕はドラスの右腕に納まったままだ。 今のままドラスを、スバルは信じられるか? 答えは否だ。だからこそ、凱を信じてスバルはただ歩み続ける。 やっと交差点を超えて、真直ぐ進もうとしたスバルの視界にドラスがギンガを捕まえている様子が見えた。 普通に見れば、背負っているように見えただろうそれは、歪んだスバルの目にはギンガが捕まっているように映る。 しかも刃をギンガに向ける男の姿もあった。死体を粉砕した、あの男だ。 ドラスと笑いあっているということは、グルだったのだ。もう、スバルに凱の言葉はない。 ギンガがナンバーズに連れて行かれる光景が繰り返される。もう二度と、あんな目に遭うもんか。 スバルはドラスだけを見て、ギンガを取り戻すべく地面を蹴る。瞳は金色、容赦なく振動拳を発動させる。 「ドラスゥゥゥゥゥゥゥゥッッ!!」 スバルには周りが見えていない。ギンガを救う、ただそれだけを純粋に思った。 ものが砕ける音が響く。骨が折れる感触を手に感じ、体液が舞い上がり、スバルに降りかかった。 「ギン…………姉……?」 スバルの拳の先には、ギンガの身体があった。 ドラスは突然の出来事で、対応し切れなかった。辛うじて、ナタクとスバルの間に割って入ってナタクが攻撃するのをやめさせたくらいだ。 スバルの振動拳がドラスに迫る。自分はスバルにしたことを思えば、当然のことだろう。 振動はコアまで届き、死ぬかもしれない。それもまた、運命かもしれないとドラスが諦め、スバルを見つめ続ける。 背中のギンガが、力の緩んだドラスの隙を突いて飛び出し、背中でスバルの振動拳を受け切った。 ギンガの血がスバルに降り注いだように、ドラスもまたギンガの血で濡れる。 「よかった……ゴホッ……私は……ようやく……。スバルを……お願いね……。ドラス……君……」 ギンガはドラスを抱きしめるように倒れ、力をなくした。 何度も見た絶命の様子。ノーヴェの最後とギンガの最後が重なる。 (また、救えなかった……) 強くなったと思っていた。仮面ライダーへの恐怖を払拭し、自分は強くなれるんだと勘違いしていた。 それは幻想だと、目の前の物言わぬ死体となったギンガが告げる錯覚を、ドラスは起こした。 もう、ドラスは混乱し何も考えられなかった。 「うあぁぁああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁっ!!!」 スバルの咆哮だけが聞こえるも、ドラスには何も届かない。 再び闇の広間へと、ドラスは舞い戻ってきた。突如豪風が吹き荒れ、空気の流れが一点に集中する。 コロニー内の空気をすべて奪いつくすといわんばかりに流れる風の中、ただドラスは呆然としていた。 □ ゼロはサイドマシーンに乗り、ひたすらドラスの元へと走っていた。 昇りになったカーブを身体を右に倒して曲がり、ゼロは忌々しげに舌打ちをする。 凱が首と胴体を別れて、物言わぬ死体となっていた。犯人は近くにいる。 ドラスが危ない。こういうことなら、凱かドラスを一人にするんじゃなかったと、ゼロは激しく後悔する。 サイドマシーンが殺戮者の手に渡っていなかったのは幸いだ。凱のPDAに戻される前に、ゼロのPDAへ登録しなおす。 あの場にPDAを落としたのはミスかもしれない。 ゼロはサイドマシーンのアクセルを全開にし続けた。 「間に合わなかったか……」 ゼロが悔しげに呟き、血塗れのギンガと、咆哮するスバル、そして呆けるドラスの姿を発見した。 唯一いつもどおりに動けるのはナタクのみ。ゼロは声をかけようとして、大きな大気のうねりに奪われた。 舌打ちしながら、サイドマシーンを発進させてドラスたちに近寄る。 「ナタク、ドラス!!」 「くっ、なんだ? この暴風は?」 ナタクが文句を言うが、ゼロにも知りようがない。まさかコロニーに穴が開いたためのものとは、神ならぬ彼らに知るよしはなかった。 ドラスは風に舞うギンガの死体を視線だけで追っていた。ゼロは無理やり、ドラスの首根っこをつかんでサイドカーに押し込む。 スバルも回収しようとハンドルを向けると、銃弾が車体に跳ねた。 「スバル・ナカジマ! 無事か?」 「ボブ……さん?」 ハンドガンを二発撃ち、HARLEY-DAVIDSONにまたがったT-800が現れた。 そこでゼロは不自然に思う。タイミングがよすぎる。 「乗れ、スバル・ナカジマ! 奴らは敵だ! ここは退くぞ!」 「け、けど……ギン姉がぁ……」 「後回しだ! 体勢を立て直す!」 T-800がスバルをHARLEY-DAVIDSONに押し込み、退いていった。ゼロはくそ、とサイドマシーンを叩く。 ナタクが暴風に対抗するために哮天犬に乗って、訝しげにゼロを見た。 「とんだ役者だ……ボブ、あいつは殺し合いに乗っている! 城茂を殺したのも、おそらくあいつだ!」 「なに! どういうことだ!?」 「凱が殺された! 下手人は……どう見てもボブ、あいつしかいない!!」 「凱が……殺されただと……? それはっ!!」 「今は退くぞ……。ごたごたを片付けるのは後だ。あいつらは修理工場か……俺たちは軍事基地に向かう! いいな!」 ナタクはまだ文句を言いたげだったが、サイドカーのドラスを見て自制する。 あまりナタクは自制が得意な方に見えない。早く落ち着く場所を見つけたほうがいい。 移動を続けるゼロたちは、交差点で沈んだ様子のチンクに会った。 ドラスを見て、チンクは沈んだ顔を押し込み、いつもの強気な姉の顔を取り戻した。 「ドラス! ゼロ、なにがあった」 チンクが現れ、ドラスの様子を気遣って尋ねる。ゼロは詳しく話している暇はない。 ボブは敵だとだけチンクに告げて、軍事基地へと向かった。ゼロはギリッ、と歯を食いしばる。 (この借りは高くつくぞ……ボブ!) ゼロはボブに対し、怒りを燃やし続けた。 □ 「くぅ……ここは……?」 バチバチ、とダブルタイフーンが火花を散らす。V3は自分がいる、深い闇の天井を見た。 床は鉄でもリノリウムでもない、未知の物質でできていた。感触としては、滑らない氷が近いのかもしれない。 周囲は四角に切り出された何もない部屋だった。 「俺は……なぜ生きている?」 「それについては、私が説明しよう」 「キサマは!」 V3が怒りを向ける。いきなり現れた声の主は、自分たちを呼び寄せた男、シグマだ。 シグマはマントを揺らしながら、警戒するV3の正面に余裕を持って立つ。 声をかけられるまで、存在を感知することができなかった。V3はごくり、と唾を呑む。 こいつ、シグマは……強い。 「制限によって命拾いしたのだ」 「制限……だと?」 「火柱キックは、キサマのエネルギーを全部費やし、その反動に耐え切れないために起こるのが身体の崩壊だ。 あのコロニーに刺したキンシひょうしきによって、キサマは自分が耐えれる、ギリギリの出力で火柱キックを放つことに成功したのだ。 もっとも、本来の威力に遠く及ばないとはいえ、コロニーに穴を開けてこの要塞に15%もの損傷を与える。つくづく呆れた性能だ」 「黙れ! ならば、俺はキサマを倒すのみ!」 シグマは聞き分けのない子供を見た大人のような表情で、ため息を一つ吐いた。 V3が構えても、シグマはただ無防備に立つのみ。 「聞け、風見志郎。いや、仮面ライダーV3」 シグマはマントの下から、腕だけ取り出しV3へと向けた。 何かを求めるように。 「私と手を組め」 「断……」 「答えを出すのは、話を聞いてからでも遅くはあるまい」 戯言を。V3は心の中で吐き捨てる。シグマは構わず、語り始めた。 □ 「ギン姉……ギン姉……」 修理工場にたどり着いたスバルはひたすら、死んだ姉のことに泣いていた。何度手を洗っても、血が落ちた気がしない。 左腕だけでは、手が洗い難くてしょうがないのだが、何度も吐きながらスバルは洗い続けた。 「……スバル」 「ボブ……さぁん……」 ボブは何も言わず、スバルの背中を撫で続けてくれた。やっと再会して、自分の味方でいてくれる。 ボブは頷いて、PDAから何かを取り出した。 「失った右腕の代わりだ。リゼンブルというらしい。両腕分あるから、君の右腕に装着しよう。 ここで見つけたメカ救急箱というものとあわせて、怪我の手当てをせねばな」 スバルはボブの優しさに、さらに涙が出る。 「私は……私は……人を殺して……ギン姉まで……」 「君の姉が死んだのは、ドラスが盾にしたからだ。悪いのは君ではない」 「う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 スバルはただ、ボブのたくましい胸に涙を流し続ける。 ようやく会えた、仲間なのだから。 T-800は泣き続けるスバルを宥めながら、冷静に現状を分析する。 シグマに対抗するものは、かつての自分がしたようにチームを組むだろう。 また、一人で数を減らすのは容易ではない。ここはスバルを味方につけ、敵を減らしていく。 どういうわけだかまだ知らないが、スバルはドラスを敵視している。好都合だ。 自分が殺し合いに乗った、とは凱の死体を通して、ゼロにも伝わっている。 他のチームに彼らの悪評を広め、外堀から埋めていくのもいい。 T-800は静かに、新たに手に入れたPDAの画面を見る。 ゼロが使い道がない、と判断したリゼンブルのパーツは、スバルの右腕となって役に立つだろう。 本来ならある程度手術が必要だが、簡単に装着できるように改造されていた。 そして、最後の一つ。ゼロがエックスへの手土産と称したアイテム。 ガイアアーマー。 ライト博士が作成した、最古のアーマーにして、山のごとき頑強さを誇るアーマー。 T-800は線が太すぎて装着することができなかった。 だが、スバルならちょうどはまるであろう。これで、スバルは自分が手に入れた最高の戦力となる。 ただ、T-800は静かに破壊活動を続けるべく冷静に計算した。 「ありがとうございます……ボブさん。もう大丈夫です……」 「……スバル、一つ質問だ。君はなぜ涙を流す?」 「それは……ギン姉が……」 「……俺に死という観念はない。だからか。人が涙を流す理由を知らない」 T-800が言うと、スバルは少し困った顔をした。いきなりT-800の手をとって、スバルは真直ぐ瞳を向ける。 始めてあった頃より、余裕はなくなっているが正義感の強そうな瞳は変わっていなかった。 「ボブさん、大丈夫。私が……教えるから。涙も……ドラスたちを許せない理由も」 T-800にスバルの言葉によって僅かなノイズが走る。 自身でも気づかないようなノイズだ。T-800は不思議と、そのノイズを嫌いに思えなかった。 外を見る。風によって次々ものが舞い上がっていった。視界センサーによれば、空気の量が減っていっていると分かる。 T-800は戦って生き残るために、冷静に現状を分析続けた。 スカイネットの指令を守るために。 □ 「理解してくれたか?」 シグマは黙っているV3に告げる。シグマが話すべきことは、すべて話した。 あとはV3がどう判断するか。シグマは答えを待ち続けた。 V3は震えている。それもそうだろう。それほど、シグマが告げた現実は重い。 V3は躊躇し、そしていつもの両腕を広げた独特の構えをとった。 「交渉決裂……か。君は私のジョーカーとなれる男だったのだが」 「俺はそれでも……一人でも守るために戦う! いくぞ、シグマ!!」 「できることなら、全快の君と戦ってみたかった。まあ、いい。こい、V3!!」 シグマはマントを脱ぎ捨て、Σブレードを取り出した。 V3のただならぬ気配。傷ついても尚、闘志は衰えず。 最後にエックスと戦って以来、最強の敵にシグマの戦士としての本能が疼く。 たとえそれが、プログラムの揺らぎであったとしても。 シグマとV3、同時に地面を蹴って互いの距離を零とした。 □ ギンガの死体は、閉じきる前のコロニーの壁の穴へと吸い込まれていった。 数奇な運命をたどり、洗脳された状態で殺し合いの舞台に呼ばれた少女は、最後に一瞬だけおのれを取り戻した。 たとえそれが悲劇しか生まなかったとしても、それを見ることのない少女は幸せだったのかもしれない。 閉じていく隔壁を越えて、少女は名前と同じ場所へと放り出された。 彼女を隔離すべく、コロニーの臨時の壁がシャッターの如く降りて、穴を塞ぐ。 ただ、何もない暗闇の中、少女の死体は漂い続けた。 ドラスは強風が吹く中、凱と灰原が死んだことを知る。 風見とチンクが合流していないところを見ると、もしかしたら彼も生きてはいないかもしれない。 ドラスが仲良くなった人たちは、ノーヴェたちを含み死んでいった。 自分を家族と認めて人が死んでいく様子は、まるで自分が死神になった気分だ。 以前ならなにも思わなかっただろう。今はただ、胸が痛いと悲鳴を上げる。 涙がドラスの頬を濡らした。この前泣いたときと違って、ただ無表情に。 どうしていいか、誰も教えてくれない。ドラスは膝を抱え、声を押し殺して泣いた。 □ 「お戻りですか?」 「ああ、手強かった。V3は死んだよ」 シグマは代理で会場を見張らせていたイーグリードに礼を言いながら、玉座へと座る。 バチッ、と左肩の火花が散った。イーグリードはそれを見て、救護班を呼ぼうとする。 「構わん。かすり傷だ」 「しかし……今後の作戦行動に支障が出る可能性があります」 「戦士のつけた傷だ。残したままでいてやりたい」 「……一つだけ、聞いてもよろしいでしょうか?」 「構わんよ」 シグマが許可を与え、イーグリードは敬礼を一度してからシグマに向く。 イーグリードはシグマへと、かねてからの疑問をぶつけた。 「シグマ隊長は四度、エックスやゼロたちと戦ったと聞きます。なのに、なぜ最初のボディを……?」 「なに、ただの感傷だ」 シグマは自嘲しながら、イーグリードに答えた。 イーグリードを先に起動させたのは、もっとも信頼できる部下だからだ。 他の世界からの戦力も持っているが、来るべき時のために今は眠らせてある。 イーグリードは最後の質問を期に、振り向いて作業に専念した。 言いたいことはまだあるだろう。イーグリード自身はエックスやゼロが参加者なのに、心が痛むはずだ。 それらを押し殺し、シグマの部下としてイーグリードは行動をしてくれる。 もっとも、シグマに離反するべくタイミングを見計らっているかもしれないが。 送られたメールを、シグマは見る。何かあったのか? というただの質問だ。 こちらの答えは、何もない。すべては順調だ、とだけ。 シグマはモニターへと視線を向けた。ただ、己が目的のために。 シグマの胸に宿る炎は、燃え滾り続ける。 【灰原@パワポケシリーズ 死亡確認】 【獅子王凱@勇者王ガオガイガー 死亡確認】 【T-1000@ターミネーター2 死亡確認】 【ディムズデイル・ボイルド@マルドゥックシリーズ 死亡確認】 【ギンガ・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS 死亡確認】 【風見志郎@仮面ライダーSPIRITS 死亡確認】 【残り十九人】 【G-3 修理工場/一日目 午後】 【T-800@ターミネーター2】 [状態]:全身に損傷(特に背部)、所々の深い傷からは金属骨格が露出、シグマウィルス感染 [装備]:滝和也のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS [道具]:コルトS.A.A(0/6)、HARLEY-DAVIDSON:FAT BOY@ターミネーター2、電磁ナイフ@仮面ライダーSPIRITS)、 PDA(凱、村雨)、打神鞭@封神演義、グランドリオン@クロノトリガー、トリモチ銃@サイボーグクロちゃん 生活用リゼンブルパーツ(左腕)@SoltyRei、メカ救急箱 [思考・状況] 基本思考:スカイネットの使命通り、全ての者を破壊する。 1:スバルを利用して人間及び、人間側のサイボーグとロボットを始末する。 2:ゼロたちのチームの悪評を流す。 3:発見した音楽ファイルに秘められたメッセージを解読。 4:用が済めば、スバルを破壊する(しかし、ノイズが発生。それを心地よく思っている?)。 [備考] ※本編開始直後からの参加です。 ※スバルに、ボブと呼ばれています。 ※地中にいた為、神敬介の接近や行動に気付きませんでした。 【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 [状態]:右腕をリゼンブルに換装。あちこちにトリモチ付着、罪の意識とそれ以上の決意 [装備]:滝和也のナックル@仮面ライダーSPIRITS、軍用双眼鏡@現地調達、ガイアアーマー@ロックマンX5 生活用リゼンブルパーツ(右腕)@SoltyRei(装着済み) [道具]:PDA×2(スバル、T-800:ラブラブビッグバンの音楽ファイル入り)サブタンク(満タン)@ロックマンX テキオー灯@ザ・ドラえもんズ、ナックルの弾薬(25/30発)@仮面ライダーSPIRITS コルトS.A.Aの弾丸(19/30発)、@SoltyRei、ライディング・ボード@リリカルなのはStrikerS [思考・状況] 基本思考:他者を破壊しようとした参加者を破壊する。罪は自分だけが背負う。 1:ドラスを許さない。ギンガの仇を討つ。 2:ボブと協力。 3:チンク、メカ沢、ロボ(後ろの二名は名前を知らない)とは、いずれ合流する。 [備考] ※本編開終了後からの参加です。 ※テキオー灯は、一時間のみ効力持続。 一度使った者には、24時間経過しなければ使用不可能と制限されています。 ※T-800のことを、ボブと呼んでいます。 【E-3 道路/一日目 午後】 【ゼロ@ロックマンX】 [状態]:シグマウィルスにより回復。T-800を敵視。シグマウィルス一個に感染 [装備]:チャージキックの武器チップ@ロックマンシリーズ、カーネルのセイバー@ロックマンX4、 プラ膏薬とポリ包帯@ザ・ドラえもんズ、謎の金属片(マルチの残骸から回収)、サイドマシーン@人造人間キカイダー [道具]:支給品一式 PDA(ゼロ)、空っぽの平凡なデイバッグ@ゴミ処理場 [思考・状況] 基本:シグマを倒す。イレギュラーに容赦はしない。 1:凱を殺したボブ(T-800)を最大の敵と認識。 2:チームの立て直しのためこのまま基地へ。特にドラスは気をつける。 3:ハカイダーを更生したい。更生に失敗したなら凱の分も、自分がハカイダーを倒す。 4:ハカイダーに再会できない場合、日付の変わる頃(二日目00:00)にハカイダーと決着をつけるため、スクラップ工場に再度向かう。 5:本郷、エックスと合流。ボイルド、メガトロン、グレイ・フォックス、ボブ(T-800)は警戒。 6:シグマ、何を企んでる? 7:風見とチンクが一緒でないことに疑問。 8:左上コロニーまで行き、そこから虱潰しに全エリアを巡る。 [備考] ※ノーヴェたちを生体パーツを使用したレプリロイド(のようなもの)と解釈しました。 ※参戦時期はX4のED~X5開始前のようです。 ※液体金属が参加者に擬態している可能性に気づきました。 ※支給品にゾンダーメタルがある可能性を考えています。 ※城茂を殺したのを、T-800だと思っています。 ※シグマウィルスに感染しましたが、発症するのにウィルスが足りないのか、それとも潜伏期間に入ったのかは、後続にお任せします。 【チンク@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 [状態]:疲労大、全身に中ダメージ、固い決意、ノーヴェの死を悟り悲しみと憤怒、姉妹の仇を討つ決意 風見の死を信じたくない。 [装備]:金属の詰まった平凡なデイバッグ(中身60%消費)@ゴミ処理場、サイクロン号@仮面ライダーSPIRITS [道具]:PDA(チンク、メカ沢、灰原、ロックマン)、ナイスなグローブ×2@パワポケシリーズ、ツバメ@クロノトリガー ゆうしゃバッジ@クロノトリガー。ガトリング砲@サイボーグクロちゃん(弾切れ) ダンボール@メタルギアソリッド、大型スレッジハンマー@ジョジョの奇妙な冒険、五光石@封神演義、アトロポスのリボン@クロノトリガー [思考・状況] 基本:ノーヴェとセインの仇を討ち、シグマを破壊する 1:風見の馬鹿者。死んだとは信じない。 2:誰が何と言おうとも、ノーヴェの仇を討つ。敬介だろうが影武者だろうが関係ない。 3:ドラスの様子がおかしい。 3:姉として、弟(ドラス)を守る。 4:本郷、エックスとの合流。スバル、敬介、ハカイダー、メガトロン、ボブ(T-800)は警戒。 5:殺し合いに乗った危険人物には容赦しない。 6:スティンガー、シェルコートを手に入れる。 7:日付が変わる頃、スクラップ工場へ向かう。 [備考] ※参戦時期は本編終了後です。 ※リシュウの仕込み杖@スーパーロボット大戦シリーズはハカイダーショットによって砕けました。 【ドラス@仮面ライダーZO】 [状態]:全身打撲、コアにダメージ。中程度の損傷&疲労。右腕がスバルのもの。悲しみ。自分が求めていたものが『家族』と自覚。 仮面ライダーへの恐怖を少し克服、仮面ライダーXへの怒り、セインを四、五歳幼くした状態に擬態。ただし、生えている 絶望、混乱。 [装備]:ラトゥーニのゴスロリ服@スーパーロボット大戦OG、メカ沢の学ラン@魁クロマティ高校、オルゴール付き懐中時計@仮面ライダーZO [道具]:支給品一式、PDA(ドラス、マルチ、ノーヴェ) 荷電磁ナイフ@マルドゥックスクランブル(D-3基地に放置。呼び出し可) スタームルガー レッドホーク、装弾数0/6@ターミネーター2(D-3基地に放置。呼び出し可) [思考・状況] 基本思考:混乱して何も考えられない。 1:チンクを守りたいが、自信がない。 2:スバルをまだ正気に戻したいが……。 3:チンクと共にロボ、メカ沢、ノーヴェの仇を討ちたいが……。 4:ギンガ、凱、灰原の死にショック。 [備考] ※自分が未完成品、仮面ライダーが完成品だと勘違いしています。 ※チンクを姉として強く慕っています。 ※無意識の内に罪悪感が芽生えつつあります。 ※志郎の言った10人ライダーの中に仮面ライダーZOがいると思い込んでいます。 【ナタク@封神演義】 [状態]:全身にギンガ戦のダメージ(中)、疲労(小) [装備]:哮天犬@封神演義、アタッチメント@仮面ライダーSPIRITS、混天綾@封神演義、乾坤圏@封神演義(左腕の方は修理が必要) [道具]:支給品一式、高性能探知機(バッテリー切れ) [思考・状況] 基本思考:家族を亡くしたドラスは悲しませたくはないが、他者と馴れ合うつもりはない。強い敵と戦う。弱者に興味はない。シグマは殺す。 1:城茂をT-800が殺した? だとしたら借りが一つできた。 2:武器を探す(宝貝優先)。 3:強い奴と戦いたいが、ドラスを放っておけない。 4:とりあえずゼロに事情を聞く。 5:凱が死んだ? 馬鹿な! [備考] ※仙界大戦終了後からの参戦。 ※アタッチメントを右腕に装着しています。 ※右腕は、修理工場の冷凍庫にて冷凍保存されてます。 ※M.W.S.は粉砕されました。 【共通備考】 ※F-4エリアの南端の壁に、火柱キックによって穴があきました。今は隔壁が降りて、コロニーの崩壊と空気の漏れを塞いでいます。 ※ギンガ・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerSの死体、フットパーツ@ロックマンX 生体センサー@メタルギアソリッド、時空管理局の制服@魔法少女リリカルなのはStrikerS 天王剣@クロノトリガー、デザートイーグル(0/7)@魔法先生ネギま! 、弾倉(0/7)×1+(0/7)×1 (弾頭に魔法による特殊加工が施されています) ハカイダーショット@人造人間キカイダー(弾切れ)、ネコミミとネコにゃん棒@究極超人あ~る、ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス×2(チンクの支給品) ドラスの腕、PDA×4(ボイルド、タチコマ、ギンガ、王ドラ) が宇宙空間に放り出されました。 【支給品紹介】 【ナイスなグローブ@パワポケシリーズ】 サクセス時に技術ポイントが上がりやすくなるグローブ。 現状ではただの野球グローブ以外機能しない。 【生活用リゼンブルパーツ(腕)@SoltyRei】 サイボーグ技術による人体用パーツ。今回支給されたパーツは両腕分。 簡単に装着できるように改造されている。 【ガイアアーマー@ロックマンX5】 ライト博士が試作中だったという、かなり古いアーマー。パワーを重視されており、トゲトラップを無効化するなどの特殊な性能も備えている。 エアダッシュができずダッシュ速度が遅い、特殊武器や強化パーツが使えないなどの制約も多く、チャージ速度が非常に早い。 ヘッドパーツ 特別な効果はない。 フットパーツ トゲトラップを無効化する。また、壁に張り付いた際、ずり落ちなくなる。ダッシュで特定のブロックを押すことも出来る。 ボディパーツ 受けるダメージを軽減し、蓄積されたダメージはエネルギーに転換してギガアタックとして使用できる。 ギガアタックは、前方に大型のエネルギー弾を放って攻撃する。 アームパーツ フルチャージ速度が高速になる。また、チャージショットが一部のブロックや敵の攻撃を破壊可能になる。 しかし、弾速と射程は通常のものにくらべ劣る。 時系列順で読む Back 真っ黒焦げの凶暴な卵(3) Next 揺れる心の改造人間 投下順で読む Back 真っ黒焦げの凶暴な卵(3) Next 揺れる心の改造人間 127 真っ黒焦げの凶暴な卵(3) 灰原 GAME OVER 127 真っ黒焦げの凶暴な卵(3) 獅子王凱 GAME OVER 127 真っ黒焦げの凶暴な卵(3) T-1000 GAME OVER 127 真っ黒焦げの凶暴な卵(3) ギンガ・ナカジマ GAME OVER 127 真っ黒焦げの凶暴な卵(3) ボイルド GAME OVER 127 真っ黒焦げの凶暴な卵(3) 風見志郎 GAME OVER 127 真っ黒焦げの凶暴な卵(3) T-800 131 仮面のはがれた殺人機械 127 真っ黒焦げの凶暴な卵(3) スバル・ナカジマ 131 仮面のはがれた殺人機械 127 真っ黒焦げの凶暴な卵(3) ゼロ 132 YE GUILTY 127 真っ黒焦げの凶暴な卵(3) チンク 132 YE GUILTY 127 真っ黒焦げの凶暴な卵(3) ドラス 132 YE GUILTY 127 真っ黒焦げの凶暴な卵(3) ナタク 132 YE GUILTY
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1859.html
サブキャラクター&その他神姫紹介 長月 紀波(ながつき きなみ) 私的CV:小野大輔 性別:男性 年齢:20歳 職業:大学生・ジャーナル会員 スバルの兄。 大学生だが、特に勉強するでもなく、ダラダラと過ごす日々。 しかし頭は良く、自分で勉強しなくても、 授業を聞いているだけで内容が頭に入ってしまう。 本人曰く「単位が勝手に入っていく」らしい。 妹であるスバルには内緒にしてある(両親は知っている)が、ジャーナル会員。 所持している神姫は、花型ジルダリアのソウ。 長月 美依(ながつき みしろ) 私的CV:井上喜久子 性別:女性 年齢:??歳 職業:看護師 スバルの母。 スバルに感化され、武装神姫にハマり始める。 現在、フォートブラッグの憐をバトルに参加させるために特訓中。 娘であるスバルには優しいが、スバルの兄「紀波」や夫「元(はじめ)」には厳しい。 長月 元(ながつき はじめ) 私的CV:森久保祥太郎 性別:男性 年齢:48歳 職業:B.S.L(武装神姫研究所)研究員 スバルの父。 B.S.Lと呼ばれる、神姫を「研究・開発」する施設に勤めており、神姫について詳しい。 事実上優しいのだが、外見から誤解を与えられることがしばしば。 姫宮 若菜(ひめみや わかな) 私的CV:風音 性別:女性 年齢:16歳 職業:工業高校二年生・ジャーナル会員 スバルのクラスメイト。 容姿端麗だが、それとは裏腹に毒舌。 強気な性格で、男子にも負けるにも劣らず。 一方、ジャーナル会員としても活躍しており、所有している神姫「種型ジュビジー」のコフィンは、 紀波の神姫「ソウ」と共に『精神(こころ)を破壊する者達(ハートブレイカーズ)』として一般オーナーたちに恐れられている。 来島 葵(くるしま あおい) 私的CV:長沢美樹 性別:女性 年齢:14歳 職業:中学生・来島財閥(神姫の衣装などの販売社)相続者 来島財閥のお嬢様で、「トラップマスター」の異名を持つ。 しかし、その名の由来があまりにも可哀想だったりする。 葵の用意しているフィールドは必ず地に足が着く。 だが、踏める所の殆どがクレイモア(対神姫用地雷)やTNT(対神姫用ダイナマイト)で埋め尽くされている。 そのため、彼女の神姫に触れることなく、相手の神姫はことごとく撃破されてしまう。 そして、ついた異名が「トラップマスター」である。 「指揮者(コンダクター)と呼ばれるスバルに興味を持ち、スバルに決闘を申し込む。 ソウ&コフィン 20080509233500.jpg 花と種の姉妹神姫。(花=ソウ 種=コフィン) ジュビジーのキュベレーアフェクションを装備し、獲物を刈り取る。 また、ソウとコフィンはジャーナル専属の神姫であり、 バトル中に相手の神姫が不審な行動を取ると、バトルモードを強制的に発動させ相手をねじ伏せる。 二刀流の華麗さと無邪気な笑みで相手を狩ることから、 ジャーナル公認の二つ名は二人揃って、 「精神(こころ)を壊す者達(ハートブレイカーズ)」。 注:ここでジャーナル公認などと表記しておりますが、これはストーリー上での設定ですので、あしからず。 ヴァリアス CV:井上麻里奈 KARASUと同じ『望まれぬ者達』メンバー、マーメイド型MMS。 残虐な性格の持ち主で、時より見せる妖艶な微笑みは「死を誘う笑み」とも言われている。 常に真鬼王のパーツを流用し、素体の細さとは裏腹にかなりゴツイ外見になっている。 バトルスタイルは朱天・極(きわみ)とそれを使った「地獄墜とし」。 地獄墜としをやられた神姫は、必ずと言っていいほどに粉砕されてしまう。 二つ名は、「死刑執行人」。 北堀 吾妻(きたほり あずま) 予想CV:関智一 性別:男 年齢:22歳 職業:??? 特に何もしていないように見える若者。 所有する神姫は、丑型MMSのディセン。 しかし、その実態は外見とは予想もつかないことである。 実態…それは“イリーガル”の討伐。 そのことを当の本人は「単なる暇潰し」と言っている。 しかし実質ジャーナルの仕事を横取りしているわけなので、ジャーナルからいい目で見られていない。 また、討伐したイリーガルの数は50を超える。 そんな彼に付いた二つ名は、「アサシン・ブリンガー」。 ディセン CV:桃井はる子 吾妻の所有する神姫。 口癖は「おーるおーけー」、「あいあいさー」。 装備がハンパなく重い。 両肩両腿にビーハイヴ・ミサイルポッド、リアウィングにカッツバルケル×8、 アイゼンイーゲル、ボレアス…など高威力・高重量の武装。 なお、近接武器は一切装備しておらず、遠距離からの砲撃で一気に沈めるタイプ。 一時は『イノセント・チャイルド』と命名されたが、 最近はイリーガルばかり相手にしていたため、 二つ名が改名され『虚偽を刈り取りし者』になった。
https://w.atwiki.jp/preciousmemories/pages/3055.html
《鳴海 ナクル(082)》 キャラクターカード 使用コスト3/発生コスト2/黄/AP30/DP30 【制服】/【メガネ】/【ネコミミ】 このカードが自分の「近衛 スバル」がいる状態で登場した場合、カードを1枚引く。 (「スバル様を温かい眼差しで見守る会」会長の鳴海ナクルです。) まよチキ!で登場した黄色・【制服】【メガネ】【ネコミミ】を持つ鳴海 ナクル。 自分の近衛 スバルがいる状態で登場した時にデッキから1枚カードを引く効果を持つ。 実質コスト軽減効果といえ、近衛 スバルがいれば1枚分損失を減らせる。 ドロー効果として見るとコスト3と重いのでおまけ程度に考えるといい。 条件がない代わりに1コスト重い《鳴海 ナクル(093)》も存在する。 カードイラストは第6話「戦争を始めましょう」のワンシーン。フレーバーはその時のナクルのセリフ。 関連項目 《鳴海 ナクル(093)》 収録 まよチキ! 01-082 パラレル まよチキ!スターターデッキ 01-082 編集
https://w.atwiki.jp/kskani/pages/471.html
揺るぎない力と意志貫くように(後編) ◆9L.gxDzakI ◆ 巨獣トトロの足は速い。 いかにも鈍重そうな外見に似合わず、その走る速度はまさしく駿足。 重量感たっぷりの巨体が疾走する様は、バッファローの突進にもよく似ている。 並走する狼が疾風ならば、トトロはまさに猛進する竜巻だ。 道を遮るあらゆる障壁を、真っ向から粉微塵に吹き飛ばさんばかりの暴風雨だ。 もちろん、自然を愛する森の主が、いたずらに環境破壊行為に走るはずもない。 ひゅん、ひゅん、ひゅん、と。 目の前に木々が立ちはだかれば、すり抜けるようにして避けて進む。 巨大な身体を苦にも感じさせることなく、紙一重で見事にかわしていく。 この速度でこの制御だ。大したものと言うほかない。 どことなく間の抜けた印象だったが、少なくとも走るという点においては、これほどの実力を有していたとは。 グレーの背中で揺られながら、なのははトトロに対する評価を改めていた。 『生体反応を捕捉しました』 首にぶら下げたマッハキャリバーが、遂にスバルの所在を察知する。 ひくひく、と動く鼻。 青色の毛並みを持った狼――ライガーもまた、彼女の匂いを嗅ぎ付けたようだ。 ばっ、と。 スピードを上げ、トトロの前へと躍り出る。 デバイスの指示を聞くまでもなく、さながら先導するかのように、勢いよく加速し先行した。 やがてトトロの鼻もまた、その匂いを感知したらしい。 ライガーにならうかのように、その黒い鼻をひくつかせた。 だが、しかし。 それと同時に。 「どうしたの?」 不意に、トトロの表情が曇った。 先ほどの笑顔が嘘のように、どこか悲しげに目を伏せる。 一体何がどうしたのか。 何か匂いを嗅ぐと同時に、妙な気配でも察したか。 あるいは薄々予感していたように、スバルが危険な状態にあるということか。 疑問の答えは、すぐに呈示されることになる。 「ガウッ!」 『うわわわっ!? ななな、何ですかぁ!?』 前方から2つの声が響いた。 1つはトトロを先導していたライガーのもの。 付かず離れずの距離を保っていた青き狼が、一足先に目的地に到達したのだ。 そしてもう1つの声が、その場所でライガーを待ち受けていたもの。 この慌てふためく幼い声には聞き覚えがある。 一瞬遅れてたどり着いた先にいたのは、予想通りの人物だった。 「リイン! それと……レイジングハートも!?」 『なのはさん!』 名を呼ばれるのを耳にしながら、急ブレーキをかけ静止するトトロの背より飛び降りる。 高い少女の声の持ち主は、やはりユニゾンデバイス・リインフォースⅡだ。 水色がかった銀髪に、特徴的な十字の髪留め。 何より30センチ程度しかない、さながらお伽噺の妖精のような身長が、それが彼女であると何より雄弁に物語っている。 何やらボディバランスに違和感を感じたが、しかし次の瞬間には吹き飛んだ。 そこにリインのみならず、予想外の存在が待ち受けていたからだ。 『マスター!』 機械的な合成音声が響く。 エース・オブ・エースが愛用する、杖型インテリジェントデバイス――レイジングハート・エクセリオン。 幾多の戦場を共に駆け抜け、幾多の敵を蹴散らしてきた、なのはの最も信頼する得物だ。 黄金と桃色に彩られた杖が、目の前の地面に突き立てている。 いずれ見つけなければとは思っていた。だが、まさかこんなタイミングで再会するとは。 『ってなのはさん、どうしたんですかそのちっちゃい身体は!?』 「説明は後! それよりスバルは――」 それが気になるのは分かる。通常の人間であるならば、このように10歳も若返ることはあり得ない。 だが、今はそんなことを論じている暇はない。 ここまで来た最大の理由はスバルだ。 あの快活な部下の姿を確認するまで、安心することはできないのだ。 リインとレイジングハートの向こうへと、半ば焦りながら視線を飛ばす。 「――っ」 そして。 見てしまった。 その先にいた尋ね人を。 捜し求めたスバルの姿を。 見るも無惨な姿と成り果て、地面にうつ伏せに倒れた己の部下を。 『相棒!』 首元のマッハキャリバーが叫んだ。 思わずそうさせるほどの、ひどい有り様だ。 純白のバリアジャケットは、至るところに血が滲み、真紅の斑点を浮かび上がらせている。 ショートパンツから剥き出しになった両足には、おびただしいまでの傷痕が刻まれていた。 重傷の2文字すら生ぬるい。誰がどう見ても満身創痍。 さながら打ち捨てられた襤褸雑巾のごとく、ぼろぼろになって倒れ伏すスバルがそこにいた。 「っ……スバル!」 一瞬の後、我に返った。 その名を呼びながら駆け寄ると、倒れたスバルの上半身を抱き上げた。 さながらかつて撃墜された日に、戦友・ヴィータに抱き抱えられた時のよう。 あの時抱かれる側にあったなのはは、今は抱き止める側にいた。 今この時抱かれる側にいたのは、自分を慕ってくれた後輩だ。 重い。さすがにこの体格差はきつい。 何しろ今は身体が小さい。平時ならこちらが4つ歳上だが、今は逆に6つも負けているのだから。 それでも、そうせずにはいられなかった。 「スバル! スバル、目を開けてっ!」 ぐったりと身を預けるスバルを、そのまま抱き止めずにはいられなかった。 先ほどは後頭部しか見えなかったが、その顔面も相当にひどい。 体育会系の元気な顔は、目に見えて蒼白になっている。 おまけに口回りに至っては、大量の血液でべっとりと汚れていた。 この出血はまずい。下手すれば、失血死ギリギリの状態かもしれない。 「お願い……目を開けてよ……!」 こんな馬鹿な。 こんなことがあってたまるか。 ようやく再会できたのに。 フェイトを救えなかった時と違って、こんなに近くまでたどり着いたのに。 今この手に抱えている命が、今にも消えてしまいそうだなんて。 どれだけ近くで掴み取っても、指先から砂のように零れ落ちるだけ。 限りなくゼロに近い距離にいるのに、その手はあまりにも遠い。 一歩一歩と迫り来る死神が、2人を強引に引き裂かんとする。 刻一刻と消えゆく命を、ただ黙って見ていることしかできない。 何という無力か。 何という無情か。 これでは同じだ。 進歩がない。 最愛の友を喪った時と、何一つ変わらないじゃないか。 「スバル……スバル……!」 そんなのは――嫌だ。 「スバルぅ……っ!」 ◆ ……………… ……………… ……あたしは……どうなったんだっけ…… あれから一体、何があったんだっけ…… ……ああ、そうだ。 あたしはあの後で倒れたんだ。 最後に大声を張り上げた直後に、そのまま気絶しちゃったんだ。 無理もないよね。 これだけボロボロになった身体に鞭打って、強引に走らせようとしたんだから。 死ぬつもりはなかった。 実際、死ななかった。 それでも、最低限こうなることは、予測できたはずだったのにね。 勇猛なのは良いが、注意力が無ければそれは唯の蛮勇に過ぎん。 周囲をよく見ずに進むのは無用心すぎる。 一人で抱え込むな。自分の役割を果たし、その上で理想を叶えられるよう邁進しろ。 全てガルル中尉の言葉だ。 偉大な軍人だった中尉が、その命を落としてしまうまでに、あたしに伝えてくれた言葉。 まだまだドジで未熟なあたしに、中尉はたくさんのことを教えてくれた。 中尉の言葉を忘れかけた時には、ティアが思い出させてくれたっけ。 もちろん今になっても、その教えを遵守できているわけじゃない。 キョン君の罠に嵌まったのは、あたしに注意力がなかったから。 自分の身体に目を背けたから、今まで意識を失っていた。 1人で何もかも抱え込んだから、そんな不注意を招いてしまった。 何度言われてもこればっかりは、全く直る気配がない。 駄目だな、あたしは。 中尉の説いた軍人の心得、3つも破っちゃった。 . ああ――それでも。 何もかも破ったわけじゃない。 何一つ守れなかったわけじゃ、絶対ない。 自分の役割を果たすこと。 最後の最後の心得だけは――決して破っていなかった。 あの四角いリングに立った時、あたしは気付いてしまったんだ。 あたしの中の死の恐怖を察してくれたウォーズマンさんが、自ら死地に飛び込もうとした時、あたしは自覚してしまったんだ。 あたしにはまだ、この生き方しかできないって。 理性よりも、本能に従う。 教え込まれた理論より、溢れ出す感情こそを選ぶ。 死に行く正義超人の背中を、あたしは黙って見ていられなかった。 それが無謀だって分かっていても、死なせたくないという想いのままに、あたしはキョン君達と向かい合った。 誰かを危険に晒すくらいなら、あたしが戦うことを選ぶ。 たとえボロボロの身体だとしても、何の計算もない蛮勇だとしても。 誰かを助けたいという願いに、理性で蓋をすることなんてできない。 冷静沈着に状況を把握し、確かな理性で戦術を構築し、自己の生存を最優先とする。 正しいサバイバルの姿勢とは、真逆に位置する戦い方だ。 軍人や管理局員としては、落第ものの姿勢かもしれない。 それでも今のあたしには、この性分を曲げることはできない。 あたしの最初の戦いの先生――ギン姉はこう教えてくれた。 打撃型のスタイルとは一撃必倒。 刹那の隙に必殺の一撃。ただ一点、相手の急所に叩き込むこと。狙うのはただそれだけでいい。 出力も射程も速度も防御力も。 自分と相手の実力差さえも、そんなことは全部関係ない。 ならあたしは、それでいい。 今のあたしはそれでいい。 余計な理屈は考えない。無理に本心を否定したりはしない。 たったひとつの意志と力を、叩き込むだけの鉄砲玉でいい。 慣れないことに手を出して、結果的に自滅するよりは、ずっといいと思うから。 そしてもし叶うなら、せめて一緒に戦う仲間がほしい。 あたしの貫く無茶や無謀に、中身をくれる仲間がほしい。 チームがそれぞれに強い部分を持ち寄れば、より万全になる。 ティアが思い出させてくれた、もう1つのこと。 悲しいけど、あたしの選んだこの道は、きっと1人では貫けない。 弾丸は前に進めても、横や後ろには曲がれない。 そのくせ加速を失えば、後はただ地面に落ちるだけ。 だから銃には狙いを定めて、引き金を引くガンナーが必要なんだ。 あのティアのように的確な指示を出して、あたしの力を引き出してくれる誰かが―― . 「――ル……バル……」 ……あれ……? 誰だろう、この声は……? ティアや中トトロの声じゃない。夢の中のものじゃなく、現実のものだって分かる声。 あたしを呼ぶのは誰? あたしを揺り起こしたのは、一体誰? 鉛のように重い瞼を、ぐっと力を込めてこじ開ける。 霧の中のようにぼやけた視界に、映ったその誰かの顔は。 「スバル……!」 ああ、そっか。 この人だったのか。 「なの、は……さん……」 なのはさんが、そこにいた。 サイドポニーにまとめられた、綺麗な栗毛の髪も。 きらきらと輝くようなその瞳も。 あたしがこうなりたいって憧れた、強く優しいエース・オブ・エース。 あたしの命を救ってくれた。戦う意味を教えてくれた。 その高町なのはさんが、あたしの所へ来てくれた。 よかった。また、会えた。 嬉しくて、嬉しくて。 身体中が痛むのに、自然と笑みが浮かんでいた。 「よかった……! 気をしっかり持って、スバル……今、安全な所に連れて行くから」 今にも泣き出しそうな声が、なのはさんの口から紡がれる。 心配してくれてるんだ。 心配、かけさせちゃったんだ。 こんななのはさんの声、今まで聞いたことがなかった。 いつも凛とした姿のなのはさんの涙なんて、今まで一度も見たことがなかった。 「なのは、さん……」 口を開く。 言葉を口にする。 消え入りそうな意識の中、血の味を感じながら声を発した。 まだだ。 まだ気を失っちゃいけない。まだ気を引き締めてなきゃ。 どうしても確認しなきゃいけないことがあるんだ。 . 「キョン、君……という、少年に……会いました……か……?」 それを聞くまでは、まだ倒れられない。 答えをちゃんと聞くまでは、意識を手放すわけにはいかない。 見失ってしまった彼が、今どうなっているのか知っているのか。 それを聞き届けるまでは、倒れるわけにはいかなかった。 「……うん……会ったよ。今は、私の仲間と一緒にいる」 それを聞いて、安心した。 よかった。 まだ、手の届く場所にいてくれたんだ。 なら、次に口にする言葉は1つ。 願うべきことは、たった1つ。 「おね、がいっ……します……力を……貸して、くだ……さい……キョ、ン、君を……彼を……助けて……あげ、て……」 ああ、やっと言えた。 大丈夫。 きっと、これで大丈夫だ。 なのはさんなら間違いなく、これ以上ないほどの強力な味方になってくれる。 彼を暗闇から救い出すために、きっと力になってくれる。 誰よりも強い、不屈のエースで。 誰よりも優しい、あたしの先生。 そのなのはさんと、肩を並べて戦えるんだ。 見ていますか、ガルル中尉。あたしはようやく、なのはさんと再会できました。 待っていてください、ウォーズマンさん。なのはさんと一緒に、必ず加勢に駆けつけます。 そして、キョン君。 大丈夫。キョン君は必ずやり直せる。 あたし達の助けが必要なら、いくらでも力になってあげるから。 あたし達が……必ず―― ◆ 再び意識を喪失したスバルの上半身を、なのはは静かに抱えていた。 瞳を閉じて眠る彼女へと、じっと視線を向けている。 見れば見るほど、ひどい怪我だ。 骨折こそしていないものの、打撲や裂傷の数は数十箇所。吐血していたということは、内臓にもダメージがあるということか。 いかに強靭な戦闘機人といえど、平気でいられるはずもない。明らかに死の一歩手前。 こんなボロボロになってまで、スバルは戦い続けていたということか。 あのキョンという少年を救うために、こんな身体で歩みを進めていたということか。 自分のダメージも決して少ない方ではない。だが彼女に比べれば、ずっと綺麗な身体じゃないか。 自分よりも弱い部下が、自分よりも遥かに身を削って、誰かのために戦っていた。 思い出せ。 スバルが自分に向けた顔を。 極大の苦痛を抱えたその身で、彼女が浮かべた表情は何だ。 笑顔だ。 スバルは笑っていた。 喜んでくれていたのだ。 こんな自分なんかとの再会を、心の底から喜んでいたのだ。 「……レイジングハート」 ぽつり、と。 傍らに突き刺されたデバイスへ、口を開く。 「スバルは今まで、どうしてた……?」 その戦いを。 その行動を。 その信念を。 問いかける。 『幾度となく傷つき、挫折しそうにもなりましたが……その度に確たる意志を抱いて立ち上がり、戦い続けていました』 『殺し合いに乗ったキョンを、スバルはずっと助けようとしてたです…… まだやり直せるって……望んでない殺人に、手を染める必要なんてないんだって……』 レイジングハートの返答に、浮遊するリインの声が続いた。 記憶を失う以前のキョンは、この殺し合いに乗っていた。それはそれで驚愕の事実だったが、今重要なのはそこではない。 スバルはやはり戦っていた。 幾度となく傷つけられようとも、たとえ立ち止まりそうになろうとも。 その度に強く踏み留まり、決意を新たに立ち上がってきたのだ。 自分はどうだろう。 そのスバルに慕われた、高町なのははどうだっただろう。 スバルが強固な決意のもとに、戦いの最中にあった時、自分は果たして何をしていた? 自信を失い迷い続けた。何度も何度も泣き叫んだ。 挙げ句あの時の自分はどうだ。 サツキを救えなかったあの時、一体自分は何をしていた? 失意。そして絶望。 それは自分自身への猜疑となり。 エース・オブ・エースの名を――捨てかけた。 こんなにもなるまで抱き続けた、スバルの尊敬をも否定しようとした。 あの時ケロロがいなければ。 あの時自分が独りだったならば。 間違いなく自分は、スバルの憧憬を踏みにじっていた。 夢に向かって駆け抜ける少女の、その一歩を踏み出した理由を粉々に打ち砕く、最低の人間に成り下がっていた。 このままじゃ駄目だ。 これ以上醜態を晒していては駄目だ。 改めて痛感した。 ならば、どうする。 自分はスバルのために何ができる。 この一途な少女のために、果たして自分には何ができる。 覚悟を、決める時だ。 あの時胸に誓った決意を、再び強固に固め直す時だ。 「レイジングハート・モードリリース」 紡いだのは号令。 一瞬、魔導師の杖が光を放った。 レイジングハートの先端にある、真紅の宝珠が発光する。 黄金と桜色の外装が解かれ、待機モードへと移行。 同時にスバルのバリアジャケットが解除され、元の服装へと戻っていく。 血と泥にまみれた白装束は消え、現れたのは管理局の制服。 されどその陸士服すらも、決して清潔なものではなかった。 通常なら戦闘には使わないようなものですら、所々薄汚れ、戦闘の跡を主張していた。 これまでスバルの歩んできた道が、決して平坦なものではなかったことを、改めて理解させられる。 ふわふわと浮遊するレイジングハートが、なのはの手元へと納められた。 そしてその両手を首元へと伸ばすと、マッハキャリバーをそこから下ろす。 「スバルをお願い、マッハキャリバー」 『All right.』 茶色い首紐が通るのは、短く切り揃えられた青色の髪だ。 本来の持ち主であるスバルの胸元で、蒼穹色の結晶が煌く。 音速の具足・マッハキャリバーは、あるべき場所へと遂に帰還した。 すた、すた、と。 そこへ歩み寄る四足獣。 蒼天のたてがみをたなびかせる狼は、トトロの連れてきたライガーだ。 準備ができたら背中に乗れ、と言いたいらしい。 既に妖精型のモンスター・ピクシーが乗っているトトロの背中に、 スバルまでも乗せてしまえば、なのはが乗るスペースがなくなってしまう。 そこでライガーの出番というわけだ。 灰の巨獣がこの狼を連れてきたのには、なるほどこういう意味があったのか。 ひょい、と。 今度はトトロの太い両腕が、スバルの身体を持ち上げた。 「――助けるよ」 呟く。 怪物の背中へと乗せられる、愛すべき教え子へと。 少女の双眸には既に、一片たりとも迷いはない。 宿したものは、決意。 意志を。 スバルと再会したことによって、より強靭さを増した覚悟を。 かつて高町なのはという少女は、気弱なスバル・ナカジマに、戦う意志を与えた存在だった。 今は、その逆だ。 静かに目を閉じるスバル・ナカジマが、高町なのはの力となった。 「いつだって……どんな人だって」 力がないのがつらかった。 魔導師としての力を奪われ、ただの少女へと貶められ。 故に何を為す自信も喪失し、何かを為す力もないままに、何度も迷い続けてきた。 しかし、今は違う。 力なら今まさに取り戻した。 最強のエースの力の源泉――レイジングハート・エクセリオンは、スバルがここまで運んできてくれた。 ならば、何を迷うことがある。 もう立ち止まらない。 決して迷うことはしない。 たとえいかなる困難が立ちはだかろうと、信じた道を貫き通す。 この殺し合いに終止符を打ち、全ての人々を救い出す。 この手に受け取ったレイジングハートと共に。 不屈の心は、この胸に。 「レイジングハート――セットアップ!」 高らかに、叫んだ。 10年来の愛機の名を、突き上げた左手と共に言い放った。 『Stand by Ready.』 刹那、世界は激変する。 湧き上がるのは眩い極光。 目も眩むほどの魔力の光が、世界を桃色一色へと描き換える。 光の中心に立つ高町なのはは、さながら宇宙に爆裂する超新星。 桜花の色に染まる極光の中、その衣服が分解された。 浴衣も、帯も。髪を留めていたヘアバンドも。 一糸纏わぬ裸体の中で、左手に持った宝珠が真紅に映えた。 口づけをする。 幼い少女の唇が、赤き球体へとそっと触れる。 ビッグバンの次に待ち受けるのは、新たな銀河の誕生だ。 全身を覆い尽くす魔力光。薄くまとわりついたオーラが、次第にその姿を変えていく。 服だ。スカートだ。赤いリボンだ。 白と青に彩られた、ドレスのごとき華麗な装飾。 グローブの左手に収まるのは、先ほどは地面に刺さっていた魔導師の杖。 バリアジャケット、装着完了。 レイジングハート、戦闘態勢。 全ての行程は一瞬にして実行される。 まばたきを終えたその頃には、既に高町なのはの姿は、魔法使いのそれへと変わっていた。 「ありがとう……スバル」 再び頭上のスバルを仰ぎ、そっと呟く。 バリアジャケットを纏った彼女の姿は、弱冠9歳でAAAランク認定を受けた、かつての天才少女そのままのようだ。 否。 正確には、そのままではない。 所々に変化が見られるのだ。 最大の変化は、スカートにある。 かつて魔導師になったばかりのなのはは、当時通っていた母校の制服と同じ、ロングスカートを身に付けていた。 しかし今彼女が履いているのは、膝丈にも満たぬミニスカート。 外気に晒される両足は、代わりにニーソックスによって覆われていた。 そう。 なのはが身に纏っているものは、かつてのバリアジャケットではない。 ほんの9歳の子供であった、かつてのなのはとは違う。 今その身体を包んでいるのは、管理局のトップエースとしての、19歳の彼女の纏うジャケットだ。 「私はもう迷わない」 エース・オブ・エース。 稀代の天才と謳われたなのはに、いつしかついていた称号。 最強の戦士たるエースの中でも、一際秀でた英雄の名だ。 時空管理局の魔導師の中でも、最強として認められた勇者の名だ。 元々派手な肩書きを嫌う、よく言えば謙虚な性分のなのはは、この名を好んではいなかった。 だが、今は違う。 管理局最強の称号を、今は胸を張って背負う。 名を名乗るということは、同時に責任を負うということだ。 その名に恥じぬ人間となることを、自らに義務付けるということだ。 最強を名乗るということは、最強の責任を果たすということ。 常勝無敗を約束し、何物にも屈さぬことを決意すること。 英雄を名乗るということは、英雄の責任を果たすということ。 正義の味方として君臨し、自分より弱い者の全てを、命懸けで守ることを誓うこと。 故に最強の英雄とは、世界全土の者の命を、その身に背負う者を指す言葉だ。 それがなのはが背負うと決めた、エース・オブ・エースの名の意味だ。 有言実行の存在だ。 「ちゃんと前を向いて、戦ってみせる」 全てこの身に背負ってみせよう。 フェイトが果たせなかった遺志も。 スバルの抱いた憧れも。 キョンを救うという役目も。 ヴィヴィオという最愛の娘の命も。 この殺戮の舞台に集められた、全ての人々の想いを背負うと。 固く、決意した。 敢えてその名を名乗ることを。 迷いも逃げ道も捨て去ることを。 この身の全てを捧げてでも、皆を守り抜いてみせる、と。 愛すべき者達の期待に応えるために。 スバルの憧れた高町なのはは。 ヴィヴィオが母と慕う高町なのはは。 エース・オブ・エースの名に恥じぬ、強くてかっこいい人なんだと、胸を張って名乗れるように。 「行くよ――レイジングハート!」 高町なのは一等空尉が、真にエースとなった瞬間だった。 【G-3 森/一日目・夜】 【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】9歳の容姿、疲労(小)、魔力消費(中)、決意 【装備】レイジングハート・エクセリオン(修復率70%)@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【服装】浴衣+羽織(子供用・下着なし) 【持ち物】ハンティングナイフ@現実、女性用下着上下、浴衣(大人用)、 ライガー@モンスターファーム~円盤石の秘密~ 【思考】 0、もう迷わない。必ずこのゲームを止めてみせる! 1、温泉へと戻り、スバルを治療する 2、冬月、ケロロと行動する。 3、一人の大人として、ゲームを止めるために動く。 4、ヴィヴィオ、朝倉、キョンの妹(名前は知らない)、タママ、ドロロたちを探す。 5、掲示板に暗号を書き込んでヴィヴィオ達と合流? ※「ズーマ」「深町晶」を危険人物と認識しました。ただしズーマの本名は知りません。 ※「ギュオー」「ゼロス」を危険人物と認識しました。 ※マッハキャリバーから、タママと加持の顛末についてある程度聞きました。 ※夢成長促進銃を使用し、9歳まで若返りました。 ※リインからキョンが殺し合いに乗っていることを聞きました。 【トトロ@となりのトトロ】 【状態】腹部に小ダメージ 【持ち物】ディパック(支給品一式)、スイカ×5@新世紀エヴァンゲリオン ピクシー(疲労・中)@モンスターファーム~円盤石の秘密~ 円盤石(1/3)+αセット@モンスターファーム~円盤石の秘密~、デイバッグにはいった大量の水 【思考】 1.自然の破壊に深い悲しみ 2.誰にも傷ついてほしくない 3.なのはとスバルを温泉に連れて行く 4.ピクシーにスバルの回復をさせる 5.???????????????? 【備考】 ※ケリュケイオンは現在の状況が殺し合いの場であることだけ理解しました。 ※ケリュケイオンは古泉の手紙を読みました。 ※大量の水がデイバッグに注ぎ込まれました。中の荷物がどうなったかは想像に任せます ◆ 戦うことは好きじゃない。 誰かを傷つけるのが怖かった。 この拳を振るうのが、本当はとても怖ろしくて、いつも手が震えていた。 だけど――この手の力は、壊すための力じゃない。 大切なものを守る力。 悲しい今を打ち抜く力。 この拳は、そのためのものだ―― ◆ 【G-3 森/一日目・夜】 【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】ダメージ(瀕死)、疲労(瀕死)、魔力消費(特大)、気絶、覚悟完了 【装備】マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS、 リボルバーナックル(左)@魔法少女リリカルなのはStrikerS メリケンサック@キン肉マン、 【持ち物】支給品一式×2、 砂漠アイテムセットA(砂漠マント)@砂ぼうず、ガルルの遺文、スリングショットの弾×6、 ナーガの円盤石、ナーガの首輪、SDカード@現実、カードリーダー 大キナ物カラ小サナ物マデ銃(残り7回)@ケロロ軍曹、 リインフォースⅡ(ダメージ(中))@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【思考】 0:………………。 1:キョンが殺し合いに戻るようなら絶対に止める。 2:なのはと共に機動六課を再編する。 3:何があっても、理想を貫く。 4:人殺しはしない。ヴィヴィオと合流する。 5:I-4のリングでウォーズマンと合流したあとは人を探しつつ北の市街地のホテルへ向かう (ケロン人優先)。 6:オメガマンやレストランにいたであろう危険人物(雨蜘蛛)を止めたい。 7:中トトロを長門有希から取り戻す。 8:ノーヴェのことも気がかり。 9:パソコンを見つけたらSDカードの中身とネットを調べてみる。 ※大キナ物カラ小サナ物マデ銃で巨大化したとしても魔力の総量は変化しない様です(威力は上がるが消耗は激しい) ※リインフォースⅡの胸が大きくなってます。 本人が気付いてるか、大きさがどれぐらいかなどは次の書き手に任せます。 【備考】 ※G-3を中心に、スバルの絶叫が響き渡りました。 どれだけの範囲に聞こえたかは、後続の書き手さんにお任せしますが、少なくともG-2温泉にはギリギリ聞こえています。 時系列順で読む Back 耐えきれる痛みなどありはしない Next かくて黒は笑いき 投下順で読む Back 鬼になるあいつは二等兵 Next 炎のキン肉マン なるか脱出!? 神社の罠(前編) スバル・ナカジマ 統ばるーただ一人を助けるその為に 耐えきれる痛みなどありはしない 高町なのは トトロ 冬月コウゾウ ケロロ軍曹 キョン ピエロのミセリコルディア
https://w.atwiki.jp/niconicomugen/pages/8789.html
「ここから、始めましょう。一から……いいえ、ゼロから!」 小説投稿サイト『小説家になろう』で連載されている作品『Re:ゼロから始める異世界生活』に登場するキャラクター。 『DEATH NOTE』に登場する死神の一人や楽園の素敵な巫女ではない。テイルズのキャラはこちら。 担当声優は 水瀬いのり 女史。 双子の姉のラムと共にエミリアの暮らすロズワール邸でメイドとして働いている鬼族の少女。 愛称は「レムりん」。 家事全般が得意であり、ロズワール邸の家事のほとんどを受け持っている。 水系統の魔法を修めており、治癒も攻撃も、スタンダードにこなす事ができる。 戦闘ではモーニングスター(鎖付きの棘付き鉄球)*1を振り回す、容赦の無い戦い方が得意。 また、鬼族の特徴として感情が昂ぶり、戦闘状態に入ると額より角が突き出し、身体能力が一気に向上する。 角は大気からマナを集めるゲートとしての役割も担っており、鬼化状態であれば普段よりはるかに強力な魔法を使う事ができる。 一般的な鬼族が二本持っているはずの角を一本しか持っていない双子は、鬼族にとって忌み子扱いであったが、 姉のラムが殺すには惜しい天賦の才能を持っていたため処分を免れる。 両親も含めた周囲には恵まれていたが、レムは才能で勝る姉にコンプレックスを抱いていた。 だが、魔女教の襲撃により一族がラムとレムを除いて皆殺しにされ、ラムも力の要とも言える角を折られてしまう。 この際、レムは劣等感を抱く原因だった姉が力を失った事に内心歓喜してしまい、そして同時にそのような感情を抱いた自分自身を卑下し、 姉に罪悪感を抱くようになる。 作中では、主人公のスバルが「死に戻り」というあまりに特異な異能を持ち、 かつそれを周囲に説明できない制約を持っていた事や、自分の殺害を回避するために不審とも取れる探索行動を取っていた事、 能力使用後に「魔女の残り香」を発してしまうため魔女教の一味と判断して、ループ内で2回に渡って殺害している。 しかし、ループの最中、手を打たなければレムが敵に殺害される事を知ったスバルは全力でこれを阻止。 この時スバルに説得された事で自分の劣等感に折り合いをつける事ができ、 同時にきっかけを作ってくれたスバルを崇拝とも言えるほどの好意を抱くようになる。 作中キャラでメインヒロインを差し置いて最もスバルを愛しているキャラクターであるが、同時にスバルを英雄視しているが故に、 彼が「死に戻り」のループの中で八方塞がりな状況に陥って逃避しようとした時は、それを許さずスバルが再び奮起するように促しており、 スバルにとっては、自分に絶大な信頼を寄せてくれる「心の支え」であり、同時に裏切るわけにはいかない「厳しさ」の象徴でもある。 …似たような妹キャラのメイドさんがいたような?(強いて違う所を挙げるなら洗濯や掃除の他に料理も得意だったり一部が姉より大きい事だろうか)。 + 以下 第三章ラスト(アニメ第2期)からの超ネタバレ注意 戦いの末に消耗が激しかったレムは一時スバルと離れて都へと帰還していた際に、 最悪のタイミングで魔女教大罪司教*2二名の襲撃を受ける。 この際、「暴食」担当のライ・バテンカイトスの権能により「名前」と「記憶」を奪われてしまい、 レムの肉体は抜け殻状態で永遠の眠りに陥った揚句、「暴食」の効果により、禁書庫により時空の流れから離されていたベアトリス、 権能に耐性のあるスバル以外の周囲の人間からレムの存在を忘れられてしまった。 スバルは「死に戻り」でレムを救おうとするが、彼の意思とは無関係にセーブポイントが救出不可能なタイミングに更新されていたため、 「レム襲撃前に遡って救出する」という手段は使えず、大罪司教を打ち倒してレムを元に戻すために行動するようになる。 そして、リアルで7年後に公開された第6章においてライ・バテンカイトスは倒され、レムは遂に意識を取り戻した。 しかし、ラム達は未だにレムの事を思い出せず、加えてレムも「記憶」を奪われたままでスバルの事を忘れていた。 スバルも倒しただけで全て元通りになるというご都合主義的考えは捨てていたため覚悟はしていたがさすがにショックを受け、 されどもかつて彼女に言われた「かっこいいところを見せてください」という願いを糧に自分を奮い立たせ、 今度こそ全面的な問題の解決に向けて方法を探る事を改めて誓った。 + 余談 主人公のスバルは…野郎だから仕方ないとして、メインヒロインのエミリアを軽くぶっちぎる人気を誇るキャラクター。 当然キャラクターグッズもスバルやエミリアを差し置いてレムとラムが先に作られたり、そもそもレムとラムしか作られない事も少なくない。 おかげでよく知らない人間からは「リゼロのメインヒロインって巨乳と貧乳青髪と桃髪の双子メイドでしょ?」と言われてしまう事態に。 作者によればプロット段階ではここまで活躍する予定はなかったらしく、書いてる途中で構想を無視して動き回った末に、 ここまでの重要キャラクターに成り上がってしまったらしい。 こういった経緯もあってか、原作小説ではスバルと駆け落ちした未来が描かれた番外編までも作られている。*3 なお、棘付き鉄球というヒロインらしからぬ(昔なら中ボスあたりが使っていそうな)武器を使うのは、 作者が初めて読んだライトノベルであり、作家を志すようになったきっかけとして愛している『ラグナロク』(著:安井健太郎)の影響だとか (紛らわしいが『ラグナロクオンライン』の原作は韓国漫画の『ラグナロク』(著:李命進(イ・ミョンジン))である)。 曰く、 「主人公の隣で戦うヒロインとはモーニングスターを持っているものなのでは?」 「俺のツイートを理解するには(ラグナロク)本編(全)11巻読んで、(ラグナロク)EXも読むんだ。 EXは『Betrayer』を読むんだ、モーニングスターを使うヒロインが出る」 との事。 とは言え昨今は「ギャップ萌え」と称してゴツイ武器を振り回す美少女(?)は珍しくないし、 そもそも鬼なんだから「金棒の一種」だと思えれば不自然ではない(鎖は付かないが)。 しかしこの話の最大の突っ込み所は、 『ラグナロク』でモーニングスターを振り回していた「裏切り者(ベトレイヤー)ジェイス」はヒロインではなくライバルの男性だという事。 …作者は腐っていたのだろうか? どちらかというと心が壊れて闇堕ちしたスバルに近いので作者の嗜虐性癖的にヒロインということかもしれない ちなみにジェイスはモーニングスターを愛用する理由について、 「人間をフルスイングで吹き飛ばした時の突き抜ける衝撃が快感」と語っているが、もしやレムもそうなのだろうか…。 ドラマCD版『ラグナロクEX:BETRAYER~裏切りの報酬~』 + 中の人繋がり 水瀬女史はどういうわけか青髪のメイドやウェイトレスの役を演じる事が多く、 ニコニコ動画と静画ではレムがヤンデレ化したり幼児退行するなどキャラ崩壊系の声優ネタが多く投稿されている。 幼児退行に関しては『シノアリス』とのコラボでは公式で記憶喪失&幼児退行を引き起こしており、 やつれていたり角が出せない等の弱体化を受けているが、自分より大きな武器を両手で振り回せる程度には戦える模様。 香風智乃 『ご注文はうさぎですか?』に登場するウェイトレス、声のほかに水色の髪も共通している。ただし戦闘力は段違い ちなみに、ラムの中の人も親友の役で出演。 MUGENではレムが智乃のモノマネをする。 ノア・メル 『白猫プロジェクト』に登場するクラゲがモチーフの少女。 こちらも青い髪をしており、武器や属性も共通している。 あるイベントでノアがメイド服を披露した事から声優ネタで弄られたり『Re:ゼロ』とのコラボを期待する声が多く、 コラボが実施された事で遂に共演を果たす。 また、レムのクラスはノアと同じウォリアーで、原作での設定から水属性となっている。 レムのモーニングスターを装備すると構えや攻撃のモーションが固有のものに変わるなど優遇されている。 スキルで鬼化も再現されており、鬼化してる間は体力が0にならないが、 ゴンさん同様、変身中は回復効果を受け付けなくなるリスクもあるので、鬼化が解除された後の介助が必要になってくる。 MUGENにおけるレム(リゼロ) + Manny Lingle氏(曼尼琳各氏)製作 MMDモデル Manny Lingle氏(曼尼琳各氏)製作 MMDモデル MMDモデルで製作されたMUGEN1.1専用のレム。 各種システムは『けもフレふぁいと!』仕様となっており、モーニングスターを振り回す近接攻撃を得意としている。 鬼繋がりなのか阿修羅閃空のような移動技を所持している他、相手を凍らせて天翔乱姫するなど、演出も作り込まれている。 また、カラーパレットの変更でラムにする事も可能。 AIはデフォルトで搭載されている。 プレイヤー操作 + Mounir氏製作 JUS風ドット Mounir氏製作 JUS風ドット 『JUS』風の手描きドットで製作された、MUGEN1.0以降専用のちびキャラ。 ちびキャラながらモーニングスターを振り回すのでリーチが長く、コンボ性能も高め。 AIはデフォルトで搭載されている。 DLは下記の動画から + ミス氏製作 ミス氏製作 スプライトは『#コンパス 戦闘摂理解析システム』のものを用いている。 モーニングスターを振り回すリーチの長い攻撃が特徴だが、氷の魔法の飛び道具も持つ。 超必殺技は「3連続攻撃」と性能及び一部技が強化される「鬼化」。 出場大会 【MUGEN大祭】特盛りシングルトーナメント 集大成2!1R先取式サバイバル! *1 ただし作中では「鉄球」という呼称で統一されており、「モーニングスター」と呼ぶのはスバルのみ。 と言うのも、魔女教関係者に「 こちらの世界の 星の名前が使われている」事が重大な謎とされる本作において、 この武器を「明けの明星(モーニングスター)(金星の別名)」と呼んだ時点で異世界転移者か魔女教関係者だという事になってしまうからであろう。 ちなみに、作者個人としては「鎖付き鉄球=モーニングスター」という呼称に納得がいかないらしい。 尤も本来は「鎖付き鉄球」ではなく「棘付き鉄球」を指す言葉なので、鎖無しでもモーニングスター(モルゲンシュテルン)である (ただし、作者自身もガンダムハンマーと呼んでいるので、イラストレーターが勝手に「鎖付き鉄球」を「棘付き」にした訳では無い様だ)。 *2 所謂敵の最高幹部に相当する存在であり、通常の魔法とは原理も殺傷能力も異なる「権能」を振るえる。 劇中で主人公サイドが勝利できたメンバーもいるが、それはスバルが死にながらもコンティニューし続けて対策したためであり、 先の戦いの影響で疲弊したレムでは勝機すら無い相手だった。 *3 ちなみに原作小説の番外編はこれのみに留まらず、ストーリー途中から分岐したifを描いたストーリーがエイプリルフールの恒例として毎年投下されている。 尤も、ほぼ全ての話がスバルが闇堕ちした挙句破滅を迎えるというバッドエンドなのだが。
https://w.atwiki.jp/puyokei/pages/1139.html
LOVE・ING・ホーミング スバルとバジルが、チャットで見せた合体技。 スバルがバジルの腕を握り、バジルの手にスバルの魔力を送る。それと同じくその手からバジルの霊力を流し、水色+緑色の魔力と霊力が混じり合った矢が形成される。 矢を放つと、同じ大きさのまま数多に分離、そのまま敵に集中砲火する。 威力は非常に高く、深海の圧力に耐えられる装甲を纏ったサブストワームを粉砕した。
https://w.atwiki.jp/sinsougou/pages/498.html
1 はやて「ふぅ……なんや始末書書くのも楽しくなってきたなぁ~」 なのは「始末書に慣れるのもどうかと思うけど。減給もされてるし」 はやて「何言うてるん。シンだって減給されてるのに頑張ってるんや!私らがみっともないとこを見せるわけにいかんやろ!」 なのは「………いや、そもそも元凶がシンじゃないの?」 フェイト「あれ、2人とも何話してるの?」 なのは「フェイトちゃん、恋する乙女は盲目なんだね…」 フェイト「…はやてのこと?」 なのは「うん…」 フェイト「はやて、これ以上始末書増えると六課としても問題だよ」 はやて「ん~それもそやな。よし、シンも交えてデスティニーの運用について話すとしよか」 なのは「最初からそうしてればよかったのに」 ~格納庫・運命のコクピット周辺~ シン「……なんか悪寒がする…」 ティア「あら、風邪引いたんじゃないの?こんなとこばっかりいるから」 シン「お前らが前にデスティニー壊したから調整が大変なんだよ!」 ティア「う……ごめんなさい…」 スバル「お詫びに風邪引いたら看病してあげるからさ…コクピットに入ってもいい?」 シン「ダメだ!」 なのは「あれ?ティアナにスバル、どうしてここに?」 ティア「スバルに付き合わされて来たんですけど…そういうなのはさん達はどうして格納庫まで?」 なのは「シンと話したいことがあってね。ここにいるって聞いたから」 ティアナ「話したいこと…ですか?」 フェイト「うん。デスティニーの運用についてちょっとね。シンは?」 ティア「コクピットの中に居ます」 スバル「へ~中は以外と広いんだね」 シン「はぁ……下手な所触るなよ?また壊されたらたまらないからな」 スバル「あはは、心配しなくても私にはサッパリだから触らないよ~」 レイハ<マスター、後方より魔りょ…いえ、殺気を感知しました> なのは「えっ………ま、まさか」 はやて「2人とも楽しそうやな。見てるこっちが羨ましくなるわぁ~」 なのは(念話)「こ、こここわいよ。こわいよフェイトちゃん!」 フェイト(念話)「はやてが笑ってる、笑ってるよなのは!」 スバル「自爆コードはいくつ?」 シン「本気で聞いてるなら叩き出すぞ…」 なのは「と、とりあえずシンを呼んでくれる?」 ティア「は、はい!わかりましたっ!」 シン「どうしたんです?隊長ともあろうお方達がこんなところへ」 フェイト「実はデスティニーの運用についてシンと話しておきたいと思ってね」 シン「え……なぜ今になって?」 なのは「え~と…ほ、ほら!私達はこういった兵器の運用方法には詳しくないからさ。今までは実験的な運用だったわけで……」 ティア(……く、苦し過ぎる言い訳) シン「そ、そうですか。でも運用についてといわれてもどんなことを?」 はやて「とりあえずデスティニーの機体データを見せてもらえへんかな?」 シン「はい。わかりました」 シン「ほら、いい加減出てこいスバル」 スバル「あ~もう少し見てたかったのに…」 はやて「スバル…シンを困らせるんなら今後アイスとティアを没しゅ…」 スバル「申し訳ありませんでした八神二等陸佐!」 はやて「うんうん♪聞き分けのいい子は好きやで」 なのは(念話)「……ティアナ…」 ティア(念話)「すみません……今はお話しする気分じゃ…」 ~データ閲覧中~ なのは「こうして見てみるとやっぱり今までみたいな前衛での戦闘がいいかもしれないね」 ティア「はい。この長距離ビーム砲は確かに危険ですし」 フェイト「その前にさ、そもそも市街戦には出撃させなきゃいいんじゃ…」 はやて「そ、それは……シンは魔法が使えなくてもわた…六課のために戦ってくれとるんよ?それを私が止められるわけないやんか」 なのは「前は逆に引き止めようとしてたのに…」 はやて「ほな、コクピットの内部チェックしよか」 スバル「お供いたします!」 シン「ちょ、それは必要ないんじゃ…」 はやて「部隊長命令や。拒否権はないで」 シン「こういう時に部隊長権限ですか。ちょっと前に『はやてさんでいいんよ』なんて言ってたくせに」 はやて「せやけどそれはただの夢や。私はそんななのはちゃんみたいなこと言わへんもん」 なのは「サラッと自分の名ゼリフ吐いちゃったよはやてちゃん」 シン「なんだかんだ言ってアンタもスバルみたいに入りたいだけじゃないんですか?」 はやて「そうや!悪いか!?」 シン「や、そんなハッキリ言われても」 はやて「何で…何でや……私は自分の気持ちに素直になってるだけなんよ。それなのにシンが…シンが気付いてくれへんから…」 シン「はやて隊長……」 はやて「私はコクピットの中でシンと2人きりになりたいんよ!!」 シン「乗りたいのなら別に構いやしませんけどね。それでもキツいですよ?」 なのは「『2人きり』はスルーしたね」 フェイト「シンも慣れてきたんだと思うよ」 はやて「私がシンの膝に座れば万事オッケーや♪」 シン「前が見えないし操縦しづらくなります。それに―」 はやて「へ、変なとこ触らなきゃ抱き締めるくらいなら……ええよ?」 シン「こっちの話聞いてないですね……ってなんでそんな『頬を染めながら上目遣い』してくるんですかっ!?」 はやて「結局コクピット入れんかった…」 なのは「当初の目的をすっかり忘れてるよはやてちゃん」 はやて「こうなったら初歩の初歩、妹キャラ行くしかないやろ!そう思わんか?」 フェイト「はやてはシンより3つ年上だよね?さすがに妹キャラは厳しいと思うけど…」 はやて「『妹は歳を食っても妹だよ』って言ってたのはどこの誰や?」 なのは「ニュアンス違うような…しかも微妙にセリフ変わってるし」 はやて「むう……そや!ユーノ君に身体操作魔法の類があるかどうか調べてもらお!」 フェイト「どんどん大事になってく…」 なのは「シンも大変な人に好かれちゃったよね~」 シン「あ~喉渇いた……ゴクゴク」 キャロ「あっ…」 シン「ん?どうしたんだよキャロ」 キャロ「それ…私の飲みかけのジュースですよ」 シン「ま、mjd!?」 一覧へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3665.html
※ 早朝、まだ陽が昇る前にエリオは目を覚ました。ベッドから起き上がろうと無意識に右手をつくと、 「痛ぅっ……!」 電流にも似た痛みが右腕を肩まで駆け抜ける。見ると、二の腕は、しっかりとギプスで固定されていた。 そうだった。そういえば、この右腕は二日前の戦闘で折れたのだったか。 薄暗い室内を見回すと、そこは寮の自室。昨夜、フェイトに付き添われて戻ってきたばかりだった。 エリオは左手で身体を支えるとベッドに腰掛ける。じんわり鈍い痛みで、すっかり目が覚めてしまった。 短パンから伸びる左膝には包帯が巻かれ、右肩も同じように巻かれていた。 硬い腕を撫でる。この腕を見つめていると、あの日の光景がまざまざと蘇る。あの日、感じた怒り、憎しみ、そして恐怖が。 二日前――そう、まだ二日なのだ。信じる正義が揺らぎ、誰を相手に戦えばいいのか分からなくなってから。 それを言えば、顔見知りの同僚を喪って怒りに燃えたのは二週間と少し前だし、 仲間の夢の道を断たれて激しい復讐の念に駆られたのはその一週間後だ。 そもそも融合体と名付けられた怪物が現れだしたのが数ヶ月前である。 たったその程度の時間で、エリオを取り巻く世界は大きく変わってしまった。 それでも、やるべき仕事を果たしさえすればよかった。その意味では身体は辛くとも、はっきりと目指す先は見えていた。 二日前、すべてが崩れ落ちるまでは。 それは、十二日前の戦闘で両目を抉られ負傷、入院していたティアナ・ランスターの見舞いに行った時のこと。 突然の悲鳴に駆け付けたエリオを待っていたのは、気絶したスバルを抱く怪物の姿。 上半身と下半身でアンバランスな容貌をした、朱色の髪をライオンの鬣の如くなびかせた融合体。 エリオはスバルを助ける為にストラーダを振るった。傷を負った融合体は逃走、それを怒りのままに追跡し、 一度は融合体に深手を負わせることに成功したが、またも逃げられてしまう。 そして、追い詰めた路地裏で再びの戦闘。最初は単調な動きと侮っていたが、その油断を突かれ、右腕を折られた。 雨で濡れた地面を利用し、サンダーレイジで反撃したと思いきや、それは幻術で作り出した偽物。 本体は、はるか空中に跳び上がり、強烈な踵落とし。明らかに融合体に可能な芸当ではない。 辛うじてストラーダで防いだものの、がら空きになった左膝と右肩を、それぞれ同時に撃ち抜かれる。 エリオは我が目を疑った。融合体の両手には見慣れた白い二挺の拳銃――クロスミラージュ。そして幻術と来れば、もはや疑う余地はない。 融合体の正体は病室から消えた僚友、完全に視力を失ったはずのティアナ・ランスターなのだと。 倒れたエリオの額に銃口が押し付けられる。銃身は雨に濡れて冷たく、それでいて、魔力弾を放ったばかりの銃口は熱を帯びていた。 その燃え盛る炎のような朱の瞳に晒された瞬間。 ゴリ、と額に硬い銃口が押し当てられた瞬間。 頭が真っ白になった。 忙しなく渦巻いていた、何故だとか、どうしてとかいった思考はすべて吹き飛び、残ったのは絶対なる死のビジョン。 自分のたった十年余りの短い生涯は、ここで唐突に、あまりにも呆気なく終わってしまうのだという確信だけ。 窮地を救ってくれたのはフェイトでもなのはでもない。ティアナと同じく――いや、彼女以上に、そこにいるはずのない人。 殉職したはずのヴァイス・グランセニックとストームレイダーだった。エリオはヴァイスの言葉に唯々諾々と頷き、去り行く二人を見送った。 傷で動けなかったんじゃない。完全に思考が停止していた。 この時、何もしなかった自分を悔いたのは、もっと後になってからだった。 追想を終えたエリオは立ち上がり、少しよろめいてベッド脇の松葉杖を掴む。本当は杖がなくとも支障はないのだが、何故だか立ち上がった瞬間、傷が疼いた。 小さな魔力弾だったせいと、撃たれた場所がよかったらしく、膝と肩の傷は思いのほか軽かった。 シャマルの治癒も受けた結果、杖も数日でいらなくなるだろうとのこと。ただ折られた右腕だけは、どれだけ早くても一週間は掛かるらしい。 シャマルもキャロも常に付いていてくれるわけではないし、骨など重要な部位は自然治癒に任せるのが一番だと言われた。 痛みはほとんどない。けれども疼くのだ。 ティアナを、それと知らず悪魔と罵ったこと。あまつさえ殺しかけたこと。そもそもが憎しみに囚われて先走った挙句、目を曇らせていたこと。 不甲斐ない自分への怒り。 思い起こせば、病室でのティアナはまだ正常な状態だったのかもしれない。だとすれば、どうして弁解してくれなかったのか。 逃げても状況が好転するはずなどないのに。 ティアナに対する疑念。 ティアナとヴァイスを見送ったことで、融合体の真実はまた一歩遠ざかった。自分が戦えない間は、スバルとキャロと隊長達に負担を背負わせる。 仲間への申し訳なさ。 深く、治る当てのない傷。それはエリオ自身の心に刻まれた傷だった。 傷は今、この瞬間も叫んでいる。焦燥感を伴ってエリオを苛む。こんなことをしている場合ではないと。 確かに。怪我をしていても、戦えなくても、何かしらできることはあるはずだ。ティアナとヴァイスの件を伏せておけるのは、今日が限界。 最悪の場合、二人はXATの手によって抹殺されてしまう。 しかしエリオは迷っていた。いっそ二人の件はXATに任せるのも手ではないかとすら思い始めていた。 何故なら、エリオにはもう一つ傷があったからだ。 自分を苦しめる傷の最たるもの。誰にも言えない、知られたくない、その傷を知っているのは一人だけ。 それは昨夜の出来事。 退院するエリオを迎えに来てくれたのはフェイトだった。杖をついて、彼女の運転する車の助手席に乗り込む。 帰りの車中で二人きり。どちらも黙って口を開こうとしない。 普段なら照れを感じて会話が途切れてしまうのだろうが、この時は違った。圧し掛かる重過ぎる現実が、互いから会話する余裕すら奪っていた。 やがて車が道程の半分を過ぎた頃、フェイトが重い口を開く。 「昨日、ティアナとヴァイス君に会ったよ」 ゲルト・フレンツェンの脱走、暴走に始まり、ヴァイスとの戦闘とティアナの転落事故。彼女が見たすべてを、フェイトは淡々と語り切った。 その心中は窺い知れない。彼女の中で整理は付いているのか、それとも、今のエリオのように混乱が渦巻いているのか。 フェイトは反応を求めているのか、再び口を閉ざした。それきり重苦しい沈黙が車内に充満する。 聞こえてくるのは、すれ違う対向車の音のみ。重みを増した空気は口から入り込み、少しずつエリオから言葉を絞り出そうとする。 そして数分後、とうとうエリオの口をついて出たのは、自身でも信じられない一言だった。 「僕は……ティアナさんが怖い……」 フェイトに臆病な自分を晒したくはなかった。 無論、男の矜持もある。しかし、それ以上に怖かった。 軽蔑されるんじゃないか。 仲間を恐れるなんて、と叱責されるんじゃないか。 そんな考えが頭をよぎってしまって。 けれど、己の弱さを吐露できるのが彼女しかいなかったから。 ひとたび堰を切ったが最後、エリオ自身にも止められなかった。 「あれは……人じゃなかった……」 ティアナじゃなかった。 本当はそう言いたかったけれど、言えなかった。あれは間違いなくティアナなのだ。 「これまでも死にそうになったことはあるけど……あんなに怖かったのは初めてだった。 どうしようもなく怖いのに、体を動かそうにも、どうにもならなくて。それなのに、ああ……僕は死ぬんだ、って。そう、淡々と感じてた……」 語るエリオはフェイトを見ない。 怖くて見られなかった。 ただ、膝に置いた拳を見つめ、身体ごと震える声で打ち明ける。 そこにいたのは騎士でも魔導師でもない。 プライドや立場を取り払った、ただの子供としてのエリオ。 「それなのに、後になってから堪らなく怖くなって」 「エリオ……」 「教えてください、フェイトさん。あれは"まだ"ティアナさんなんですか? 僕達は……もう一度、分かり合えるんでしょうか」 フェイトに縋って答えを求める。泣き出す寸前の、この上なく情けない顔で。 フェイトは淡々と前を向いたまま、エリオを見ずに答えた。 「最初の質問については、"まだ"ティアナと呼べると思う。 私は直接話してないけど、ヴァイス君の口振りから察するに、彼が一緒にいることでティアナの精神状態は安定してるみたい。 それがいつまで続くのか、今もそうなのかは分からないけど。でも、もう一つは……私にも分からない」 なのはに課せられた宿題。 ティアナを、その手で斃せるか否か。 スバルならきっとティアナを守りたいと言うだろう。ティアナを救う為に戦うと。暴れるなら身体を張って止めると。 毎日、足しげく見舞いに通う姿からして、彼女がティアナの負傷に責任を感じているのは明らかだった。 エリオとキャロだけが知っている、ティアナの前でスバルが見せていた顔。 表面上は笑っているのに、どこか不安定な、今にも泣きだしそうな張り詰めた表情。 見るに堪えなかった。 キャロは迷っている様子だったが、彼女は強くて優しい娘だ。確信はないが、スバルと同じ意見に傾くような気がする。 「でも駄目だ……僕にはできない……」 強くて優しい、キャロのようにはなれない。染みついた恐怖が、どうしたって拭い去れない。 けれど、それが"あれ"を見たが故と言い切るのも、己の弱さを誤魔化すようで嫌だった。 「でも怖いからってだけじゃないんです。ティアナさんを放っておいたら、きっと恐ろしいことになる。だから……」 「だから?」 フェイトは車を路肩に寄せて停車させ、優しい声で繰り返した。 「だから……僕は……」 どうしたいのだろう。 ティアナを放置しておけない。スバルほどティアナを手放しに信用できない。 だからと言って、ティアナを融合体として斃すのも嫌だった。それ故の苦悩。 もう一度、仲間の為に、力なき人々を護る為に、死んでいった人々の為にと、 大義を振りかざして心を怒りに染められたなら、どれだけ楽だろう。 でも、ティアナとヴァイスであると知ってしまった以上、それもできそうになかった。 「いいんだよ、エリオ。無理に戦わなくても……」 優しく、赤子をあやすようにして髪を掻き分け、頭を撫でられる。エリオが驚いてフェイトを見ると、 彼女は目を細め、慈愛の瞳で語りかけていた。 「これは隊長としてじゃなくて、私個人としての願い。エリオが辛いなら、ここで降りていい。 私と同じ……ううん、一緒に訓練して戦ったティアナを斃すなんて、きっと私以上に辛いと思う」 それはいつだったか、自暴自棄になっていた自分を抱き締めてくれた時と同じ瞳。 実の母親でさえ注いでくれなかった優しさだった。 「私にも誰にも強制なんかできない。だから、エリオが心に取り返しのつかない傷を負ってまで戦うくらいなら降りてほしい……なんて」 降りる――即ち、リタイア。局を辞め六課を去る。 現状で可か不可かはともかく、それをフェイトの側から提示してくれたことで、エリオの心は幾分か救われた。 だが、フェイトの慈みは誰にでも向けられるものではない。守るべきものの為なら、修羅にもなる。 それを確信したのは直後のことだ。 「ねぇ、エリオ。私は決めたから。ヴァイス君と話して分かったから、私のやるべきことが」 いつしか慈愛の瞳は、決意を秘めた真摯なものに変わっていた。凛とした視線はエリオから外れ、真っ直ぐ前を向いたまま揺るがない。 「ティアナとヴァイス君を討つ。私は撃てる。それが必要なら。ティアナとヴァイス君が人を傷つける側に回るなら」 自分に言い聞かせるようにフェイトは呟く。その発言にエリオは悲壮な覚悟を感じずにはいられなかった。 心優しい彼女が、その結論に至るまでにどれだけの苦悩を繰り返しただろう。 彼女はエリオに話すことで、自身をもう戻れない状況まで追い込もうとしている。 「だから、エリオもエリオ自身で決めて。六課に来た時と同じように、まだ戻れるうちに」 ゴクリ、と息を呑む。 まだ戻れるうちに。 遠からずミッドチルダを揺るがす何かが起こると、フェイトは示唆しているのだ。 「命懸けで戦うのは自分だもん。自分で決めなきゃきっと後悔する。だから相談には乗れても、決めるのはエリオだよ」 フェイトは再びエリオに目を向け、きっぱり言った。 突き放す物言いにも取れるが、想いは十分に伝わっていた。 直後、そっと伸びた手に抱き寄せられる。それが確かな証だった。 「でもね、それがどんな道であれ、エリオが悩んで決めたなら私は受け入れる。その選択を応援する。 私のエリオへの気持ちは何も変わらない。それだけは忘れないで……」 頭が彼女の胸に沈み込む。目を閉じると感じる、柔らかい感触と香り、そして温もり。 どうしようもなく優しくて嬉しくて。 いつしか頬を涙が濡らしていた。 「はい……ありがとうございます、フェイトさん」 震える声で言うと、それきりエリオは我慢を止めて泣きじゃくる。後はもう嗚咽が漏れるだけだった。 フェイトは何も言わず、泣き止むまで頭を撫でてくれた。 この時、誓ったのだ。 みっともなく泣くのは今日で最後にしよう。 明日はもっと強くなろう。 まだ迷いは晴れないし、答えは出ない。それでも彼女に縋らず自分の足で立てるように。 エリオは片手を器用に使い、ややもたつきながらも訓練着に着替えた。 この腕ではまともにストラーダも握れないが、基礎体力訓練なり回避練習なり、何かやり様はあるはずだ。 左手一本での槍の取り回しを練習するのもいい。 ただでさえ二日も無為に過ごしている。もう一分一秒でも無駄にしたくなかった。 とにかく、がむしゃらに。何処を目指すのかもわからぬまま、何でもいいから強くなりたかった。 時刻は午前五時半を回った頃、まだ窓の外は薄紫に染まり、寮内も寝静まっている。 朝の冷えた空気に少し身震いしながら、エリオは部屋を出て訓練場に向かう。 冷たい無機質な廊下を、足音を押さえながら抜ける。が、外に出ると冷えた空気は一変した。 いや、気にならなくなったと言うべきか。 今日の訓練場は廃棄都市区画などに姿を変えることはなく、そこには六課の現フォワード陣が勢揃いしていた。 「ああ。おはよう、エリオ」 「腕の調子はどうだ? あまり無理をするなよ」 「けどまぁ、病み上がりでも朝練しようって根性と熱意は褒めてやるぜ」 「あ、はい。おはよう……ございます」 なのは、シグナム、ヴィータが口々に声を掛けてくる。エリオは呆気に取られ、曖昧な返事を返すのが精一杯だった。 何故、彼女らがここにいるのだろう。まだ訓練開始には早い。一人二人ならまだしも、特にシグナムなどは訓練に顔を出すことすら珍しいのに。 だが、今日は全員――そう、全員がエリオより早く出ており、当然その中にはスバルとフェイトも含まれている。 「おはよう、エリオ君。もう大丈夫なの?」 「あ、うん。ねぇ、キャロ。これはいったい……」 最初に近寄ってきたキャロに問う。目下最大の疑問は、フォワード陣の存在よりも―― 何故、フェイトとスバルはBJを装着し睨み合っているのか、であった。 これはただの訓練とは異なり模擬戦なのだろう。それは分かる。ただ、二人の間に漂う空気は、交差する視線は本気そのもの。 とても一日の初めに軽く慣らす訓練とは思えない。 スバルに至っては見るからに全身が熱を帯びていて、ゆうに一時間以上は身体を動かしているだろう。明らかに息を荒げている。 「ん……なのはさんの発案で、ちょっと模擬戦」 「模擬戦って。スバルさん、何時から訓練してたの? 朝からあんなに飛ばして大丈夫かな」 心配するエリオにキャロも表情を曇らせる。彼女も不安を感じているのだ。 「かれこれ一時間ってとこかな。大丈夫だよ、あれくらい。これまではウォーミングアップみたいなもの、むしろ身体が温まってちょうどいい」 「なのはさん……」 キャロに代わって答えたのは高町なのは。観戦している面子で一人だけBJに身を包んでいる。 視線で意味を問うエリオに、なのはは続けた。 「ちょっと試しにティアナを想定した模擬戦ってとこかな。って言っても、融合体のティアナとのね」 「ティアナさんとの……」 「戦闘の映像を見て、フェイトちゃんがシミュレーションには適任だと思ったの。 思考した上での戦術か、本能レベルかは分からないけど、ティアナは接近戦を絡めてくる可能性が高い。 融合体のボディの耐久性と膂力、これを接近戦に使わない手はない。 多分、ただの打撃でもリボルバーナックルを装備したスバルぐらいの力は出せるだろうね。それに――」 「加えてクロスミラージュからの銃撃も警戒しなきゃいけない――だから、遠近どちらも得意なフェイトさんに?」 エリオが続きを引き継ぐ。 なのはの意図するところはすぐに理解できた。確かにフェイトなら、"あの"ティアナを再現するのに適している。 いや、管理局に魔導師多しと言えど、彼女以上の適役はそういない。その理由は誰より自分が一番知っていた。 「そう、でも一番の理由はスピード。人型の上半身と真逆に、下半身は獣に近い形をしている。エリオも言ってたでしょ? 瞬発力では負けてるって。 地上限定とはいえ、フェイトちゃんにも匹敵するかもしれない」 融合体と化したティアナの下半身は太く、それでいて強靭な、さながら獣の後肢だった。あの脚で蹴られれば、まず無事では済むまい。 しかも先端には鋭い爪まで生えている。 「決定打には欠けていても、今のティアナは完全なオールラウンダー。 それを殺さずに制するって言うんだから、手加減したフェイトちゃんにくらい勝てなきゃ話にならない」 「だから、スバルさんはあんなに……」 スバルの本気は、眼、体捌き、全身から溢れる魔力からも明らか。対するフェイトも隙のないの構えで、スバルと対峙している。 こちらも本気だ。 なのはと副隊長陣の視線は一触即発の二人に注がれていた。今回、なのはは敢えて開始の号令を控えている。 両者のタイミングに任せるつもりなのだろう。 エリオは隊長陣の邪魔にならぬよう、隣のキャロに小声で囁いた。 「なのはさん、よく許可したね……。スバルさん、昨日の夜まで拘禁されてたんでしょ? なのに、いきなり早朝から自主練と模擬戦なんて……」 「これからは、空き時間はできるだけスバルさんに付いて教導するつもりみたい。勝手に動かれるよりはいい、だって」 「そっか……じゃあ、やっぱりスバルさんは――」 「エリオ、キャロ、始まるよ」 なのはが言うが早いか、スバルとフェイトが同時に動きを見せる。よく均された土の地面を蹴って、両者弾かれたように飛び出した。 互いの間に横たわっていた10mほどの距離は一瞬で縮まり、ゼロになる。 そして激突。 バルディッシュとリボルバーナックル、金属と金属がぶつかる耳障りな轟音が空気を震わせた。 余波はエリオとキャロの許まで伝わり、思わず身を竦ませてしまう。 それこそ隊長達が平然としていられるのが不思議なほどに。 一度正面からぶつかった後は距離を取る。スバルはバックステップ、フェイトは後方に大きく跳んだ。その間も攻撃の手は止まない。 フェイトの掌からはプラズマランサーがスバル目掛けて放たれた。スバルを狙う雷撃の槍は地面を穿ち、土を巻き上げる。 スバルはスバルで、ステップしながら態勢を立て直し、すぐに飛びかかれるよう拳を構える。 どちらも掛け値なしの本気。音や衝撃のみならず、闘気の波とでも言うべきものをエリオは感じ取っていた。 フェイトはティアナを想定している為か、飛行はせず跳躍だけではあるが、戦う姿勢は真剣だ。 矛盾しているようだが、フェイトともなれば、制約の中で力の上限を抑えた上での全力全開が可能なのだ。 上から課せられたリミッターとは似て非なる、意識の上でのリミッターとでも言うのか。 だが、それはスバルも同じ。マッハキャリバーが唸りを上げ、跳び退るフェイトを猛追する。彼女もまた、模擬戦故に残す体力、魔力量を概算。 合わせて力の上限を下げ、その中で全力を発揮する術を心得ていた。 それもそのはず。まだ時刻は早朝。 スバルはこれから夕方、或いは夜まで更なる訓練をし、出動ともなれば融合体やガジェット、戦闘機人との闘いに赴くのだから。 「どうしてそこまで……」 エリオが呟いた。 信じられなかった。そうまでして自らを痛めつけるスバルも。それを許すなのはも。 いや、本心では分かっていた。スバルが焦る理由は一つしかないと。 「ティアナさんの為だよ」 戸惑いがちに発した独り言に返したのはキャロ。なのはに聞こえないよう、エリオの耳元で囁く。 「スバルさんもね、独房にいる間に私たちと同じことを聞かれたんだって。ティアナさんを殺せるかどうかを。 それでスバルさんは悩んで悩んで、ずっと苦しんで……ティアナさんを助けたいって決めたの」 「でも、それじゃ市民や局員、XATに危険が……!」 「だからね、『あたしが真っ先にティアを捜し出して駆けつける。戦わなきゃいけないなら、あたしが先頭に立ってティアを止める。 誰かがティアを殺めようとしても、あたしには止められない。でも、その瞬間まであたしはティアと話したいんだ。 力尽くでも、たとえティアをぶっ飛ばしてでも。それも分かり合う為の手段の一つだと信じてるから』だって」 戦うことで、力と力をぶつけ合うことで対話する。言うのは簡単、だが、そんなものは夢想に過ぎない。 今のティアナはスバルよりも確実に強いというのに、それを殺さずに制するなんて無茶にも程がある。 それでもスバルは諦めていない。今も遥かに格上のフェイトに果敢に立ち向かっている。 がむしゃらなその姿がエリオにはやけに眩しく、言いようのない不安が胸に湧き起こった。 「だからって、市民や仲間の危険は払拭し切れないじゃないか……。いくらスバルさんが先陣切って戦うからって、危険には変わりないよ」 「エリオ君……」 「ごめん。こんなこと言うつもりじゃなかった」 完全な八つ当たりだった。とことん一途になれるスバルへの、それを嬉しそうに語るキャロへの嫉妬。 二人はこんな自分を情けない奴と笑うだろうか。冷たい奴だと蔑むだろうか。 そんな思いがつい、口をついて出てしまった。 「スバルさんね、なのはさんに頭を下げたんだよ。自分の無茶を許してほしい。できるならティアナさんを助ける為に力を貸してほしいって」 これまでの誇らしげな顔とは異なり、語るキャロの表情は暗い。まるで自分だけ仲間外れにされたような――今のエリオと同じ寂しげなもの。 「それで……キャロはどう思うの?」 「確かにティアナさん一人を助ける為に皆が協力するのは危険だと思う。 けど、ティアナさんがいればもっと多くの人が救える。 ヴァイス陸曹と一緒に……二人の協力があれば融合体の秘密に近付ける……ううん」 キャロは一旦そこで言葉を切った。目を閉じ、力なく首を振る。 「これは詭弁。私はきっと、ティアナさんにもヴァイス陸曹にも死んでほしくないの。ただ、それだけ。 ほんと言うとね、私もちょっと諦めてた。私も一瞬だけどティアナさんの後ろ姿をこの眼で見たから。 正直、怖かった」 キャロも同じだったのだと知り、エリオの心は少しだけ救われた。だがホッとしたのも束の間、すぐに自己嫌悪が込み上げる。 何を安心しているんだ僕は。 ティアナを恐れる同類が自分だけじゃないのが嬉しいとでも言うのか。 「でもね、戻ってきたスバルさんは違った。絶対に諦めないって力強い意志を瞳に秘めて……眩しかった」 キャロの唇は次々とスバルを称える美辞麗句を紡ぎ出す。 首を絞められて気絶させられたのに。 死にかけたのに。 諦めない彼女は強い、凄い、逞しいと。 (何だよ、それは。それじゃあ……それじゃあ、僕は……) 裏を返せば、殺されかけたのを、いつまでも引き摺って恐怖している自分は――。 またも嫉妬心が頭をもたげてくる。何か、何か言ってやらないと気が済まなかった。 「でも、それじゃ市民の安全が……!」 この瞬間、エリオにとっての護るべき市民はただの言い訳に成り下がっていた。 嗚咽のように堪えきれず吐き出した指摘は正論だったろう。けれどその心中は醜い。否定されたくない、 己が弱いと認めたくないという自分本位で利己的な主観に満ち満ちていた。 自分自身、それを自覚していたからこそ最後まで言えなかった。キャロはエリオの言わんとするところを察したらしく、 「うん、そうだね。XATみたいに見つけ次第、処分……殺してしまった方が被害は抑えられるのかもしれない。でも、ほんとにそれでいいのかな」 「……どういうこと?」 「だって、このままじゃ融合体になった"被害者"の大事な人があんまりだよ。融合体になったが最後、もう助けられないなんて悲し過ぎるよ。 そりゃあ今も融合体を人間に戻す研究はなされてるみたいだけど、いつになるか……。ティアナさんやヴァイス陸曹、ゲルトさんは明らかに他と違ってる。 そんな人達を融合体だからって殺すのは違うと思う」 「どうかな。一昨日の事件でゲルトの名声は地に堕ちたじゃないか。ゲルトは人を襲おうとしたんだ。みんな掌を返してゲルトを殺せって叫んでる」 「それは、みんな怖いからだよ! だから攻撃しちゃう。でも、ゲルトさんやティアナさんもそうだったのかもしれないじゃない。 放っておけないのは分かってる。だからこそ、私たちがいるんだよ。でなきゃ真実が掴めないまま、みんなが周りの人を疑って生きていく」 キャロは一歩も退かなかった。気弱だった彼女は今、そこにいない。その瞳に力強い光を秘め、キッとエリオを見据えている。 その立ち姿は彼女の語ったスバルを想起させた。 だからこそ認めたくなかった。気高い彼女と矮小な自分を比較して、余計に苛立ちが募る。意固地になってしまう。 本当はこんなことを言いたいのではないのに。 「その為に僕たちが無用な危険に身を晒すことになる。そんなの――」 「無用じゃないよ! 無駄なんかじゃない!」 突然叫んだキャロに面喰ったのはエリオだけでなく、なのはもそうだった。 振り向いてキャロを見ているが、キャロはそんなことにも気付かず、胸の前で拳を固め震えている。 ふるふると。目にいっぱいの涙を溜めて。 怒りと悲しみが綯い交ぜになったような、爆発する感情を堪えているような、そんな顔。 エリオは完全に圧倒され、たじろぐばかりだった。 「キャロ、エリオ、いい加減にして。今は訓練中、視ることも訓練の内だよ」 まだ何か言いたそうだったキャロを厳しい口調で抑えたのは、やはりなのはだった。 「思想を戦わせるなとは言わないよ。最終的な決定は本局や地上本部が下すものとしても、二人に問いかけたのは私だしね。 だけど、どちらにせよ私たちは戦わなきゃいけない。その時、自分のデバイスに想いを乗せられるか、両足を支える力にできるかどうか―― スバルはそれをやってる。だから、しっかり視てて」 キャロと二人してスバルを見やる。会話に熱中して数分、スバルはまだ食い下がっていた。 けん制しつつ距離を保つフェイト。それは彼女にとって射撃、格闘、どちらにも対応可能な最適の距離。 どれほど激しく動こうと縮まらない一定の間隔は、如何なる侵入も許さない鉄壁の城塞のよう。 フェイトの周囲、およそ半径2m以内は、まさしく彼女の制空圏であると言えた。 対するスバルは必死に食らいつく。絶対の領域に一歩でも踏み込もうとマッハキャリバーを走らせる。 バルディッシュを持った右手、空いた左手、両の手で展開し重なり合う魔法陣。 左手からは直射型の魔力弾、バルディッシュからは刀身の形をした誘導刃――ハーケンセイバーが放たれる。 バチリと至近距離で弾ける雷の矢は、一撃でもスバルの足を止めるに足るもの。それが無数に迫るのだ、非殺傷設定と知っていても恐怖するはず。 だが、スバルは止まらない。身体を左右に振って、極限まで引きつけた魔力弾を回避。 首を振ると誘導魔力刃が耳元を掠める。 それでも視線はぶれなかった。後退する目標を見据えて、足はひたすら進み続けた。 「ちぃっ!」 フェイトの口からこぼれたそれは無意識に漏れたように感じられたが、表情に焦りは見られない。 弾幕はすべてかわされ、ほぼ肉薄されたにも関わらず、である。 手を伸ばせば掴める距離まで近付いたスバル。そして彼女は手を伸ばす。当然だろう、組めばスバルの有利は絶対。 如何にフェイトと言えどバルディッシュを振るうには近過ぎる上、得意のスピードも殺される。捕まえて離さなければスバルの勝利は揺るがない。 それら不利な状況を些細な計算ミス、歯車の食い違いだとばかりに平然としているフェイトに奇妙な違和感を覚えた瞬間、 「っくぁあああああああ!!」 苦悶の絶叫がスバルの喉から絞り出された。背中で魔力刃が炸裂したのだ。小規模の爆発と共にBJが破れ、前のめりに倒れ込もうとする。 通常なら鋼鉄だろうと合金だろうと切り裂く金色の刃も、非殺傷ならこの程度。しかしその程度でもスバルに与えたダメージは大きい。 おそらく今の彼女は熱と衝撃で声も出せないだろう。 フェイトはハーケンセイバーが回避されることを読んでいた。だからこそ生きていたハーケンを再度操作、がら空きの背中に撃ち込んだ。 こんな単純で稚拙な策に引っ掛かったのも、前だけ見ての猛進、いや、前しか見ていなかったが故の油断。その結果の被弾。 彼女は、あまりにも一本気過ぎた。まっすぐで決して己を曲げず、折れない。だから読み易く、足を掬うのも容易かった。 ふらついたスバルに対し、フェイトはここぞとばかりに追撃を開始する。バルディッシュを軸に跳躍、回転による遠心力を加えた爪先が側頭部にめり込む。 傍目にも痛い一撃。ゴッ、と耳障りな音と共にスバルのバランスが崩れた。 まだ終わらない。フェイトは地に足を付けることなくスバルの髪の毛を掴み、回転と逆方向に身体を捻る。 もう一方の膝を叩きつけ、先ほどとは反対側から脳を揺らした。 羽でも生えているのかと見紛うほどに軽やかな動き。これで飛行魔法を切っているというのだから驚きだった。 バルディッシュを手放したフェイトは、しかし華麗な体捌きのみで三撃、四撃と徹底してスバルの顔面に蹴りを加えていく。 一撃目は呻きを発していたスバルだったが、もはや声を出す余裕もないのか、或いは既に意識が飛んでいるのか、 されるがままになっている。それでもなお、フェイトは打撃を加え続ける。見下ろすその視線は恐ろしく冷ややかだった。 破壊のみに重きを置いた、残酷で容赦ない体術。だが、不思議と美しさすら感じられた。もっとも、やられた方は堪ったものではないだろうが。 フェイトの体術は初めて見たが、スバルほどじゃないにしろ堂に入っている。 と言うか、あれだけ体重とスピードが乗っていれば格闘の心得はさほど問題じゃない。 まぁ彼女とて、単独捜査をすることもある執務官でありライトニング分隊長、当然と言えば当然。デバイスなしでの無力化に長けていても何ら不思議はない。 ただ、らしくない。 いつものフェイトならバルディッシュを起点にして攻撃、防御を行っているだろう。 こんなふうにバルディッシュを手放してでもアグレッシブに攻めることはまずない。 機動六課きってのオールラウンダーであり、シグナムと互角の接近戦を可能としながらも、その戦法は冷静で堅実。 『動』と『静』で言えば間違いなく『静』。 なのにあの戦闘は何だ。普段のフェイトとはほど遠く、まるで獲物に喰らいつく野獣。だが、どこか既視感がある。 エリオは暫し黙考し、やがて確信した。 「そうか、あれはティアナさんなんだ……」 フェイトはティアナを再現していると。 それ自体はなのはから聞いていたが、まさかこんな形で再現するとは思ってもみなかった。土俵を合わせるだけだろうと、そう思っていた。 さしずめハーケンを当てるまでが手傷を負わせた後のティアナ。今の状態が最初のティアナといったところか。 狡猾で冷徹な狩人と狂乱する野獣。どちらが強いかは言うまでもないが、どちらが恐ろしいかは判断に迷うところではある。 あの日、自分は怒りで恐怖心を麻痺させていたが、もし何の前触れもなく、或いはティアナと知った上で対峙していたならば、あれほど上手く捌けただろうか? おそらく否。スピードだけでもティアナは並の融合体を凌駕している。少しでも足を止めていたなら、狩られていたのはこちらの方。 圧倒的な勢いと迫力は、時にそれだけで脅威となる。手傷を負わせられたのは、偏に迷いなく身体が動いてくれたお陰だ。 戦士ならば、頭に血が上っていても身体は訓練した動きを取る。感情とは別の部分で戦いの為だけの直感が働く。 だが視野が狭まれば、その内側には意識を集中できるが、代わりに思わぬ落とし穴に嵌まるもの。それも普段なら考えられないような単純な形で。 今のスバルがまさにそうだ。しかもスバルは一撃を受けた時点で混乱している。 フェイトらしからぬ攻撃に、自分が"どちら"のティアナを相手にしているのか、"どちら"に合わせた戦法を取るべきか分からなくなった。 無論、それがフェイトの作戦である事は言うまでもない。 だからと言って、これは――。 「なのはさん……止めないんですか……?」 凄絶な光景にエリオは堪らず抗議した。とっくに勝負は着いている。むしろ遅過ぎるくらいだ。 なのに、いくら待ってもなのはは止めようとしない。打ちのめされるスバルを睨んでいる。それはシグナムもヴィータも同じだった。 誰もがフェイトの暴挙とも言うべき行為を黙認している。 (これじゃあの日と同じだ……。スバルさんとティアナさんが、なのはさんに撃墜された模擬戦の日と……) どう考えてもやり過ぎだ。模擬戦の度を超えている。 本当にこれが抑えた全力なのか、この後スバルは訓練を続けられるのか、だんだんエリオは自身がなくなってきた。 いまだ絶え間ない殴打を続けるフェイトの冷たい視線。あれは、あの日のなのはと同じ、いや、それ以上の警告ではないかと。 エリオは昨晩、フェイトの決意を聞いている。必要なら、ティアナとヴァイスを殺すことも厭わないという悲壮な決意。 そこへどうしても救いたいと、戦意を削ぐような発言をするスバルは邪魔なのかもしれない。 思い知らそうとしているのか? そんなことは不可能だと。 そんな甘い戦いではないと。 (いや……フェイトさんに限ってそんなことするはずが……) 信じたい。しかし、今のフェイトの真意が読めないのも確かだった。 見るとキャロも青褪めた顔で、半分目を背けかけていた。 (仕方ない、こうなったら僕が――) と、エリオが一歩踏み出した瞬間、 「まだだよ、エリオ、キャロ。黙って見てて」 ぬっとレイジングハートが眼前に突き出された。なのはから制止が掛かった。 何故かフェイトではなく、エリオたちに、である。 「何でですか! あんなの……もう決着はついてるじゃないですか!」 「ついてない。どちらかが戦闘不能になるか、負けを認めるまで。タイムアップはなし。そういうルールだよ」 「そんな……」 エリオは言葉を失い、身体を震わせた。 怒り、悲しみ、失望、恐怖。様々な感情がない交ぜになって、制御が利かなくなりそうだった。 「どうしちゃったんですか、なのはさん……。やっぱりあの時と同じなんですか!?」 「待って、エリオ君。まだスバルさんは倒れてない。それにあの時とも違うよ」 食い掛ろうとするエリオを止めたのはキャロ。両手でエリオの肩を抱いて、正面から視線を捉えて毅然と告げた。 「最後まで見てなきゃ駄目。そうすればエリオ君にも、私の言いたいこと分かってもらえると思う」 エリオは荒い息を吐きながらも、渋々といった様子で元の位置に戻る。 キャロにこうも真剣に止められては押し切るに押し切れなかった。 なのはは、その様子を横目でチラリと見遣るが、すぐに視線をスバルとフェイトに戻してしまった。 一瞬、垣間見えたその眼は、感情の込められていない目ではなく、押し殺した目にも見えた。 前へ 次へ 目次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1103.html
「なのはさんのお兄様だけあって、やっぱり格好いいですね~」 あいさつが済むと同時に、スバルは目をキラキラと輝かせ、ブリッコのポーズを取りながら言った。 「ちょ、ちょっとスバル! いきなり馴れ馴れしくするんじゃないわよ!!」 ティアナに怒鳴られるが、スバルはしゅんとした表情で人差し指同士を合わせながら反論する。 「でも、本当にそう思うんだもん」 「ははは、どうもありがとう」 恭也は笑顔で二人に言うのと同時に、店の入り口から恭也と同じ翠屋のエプロンをつけた、半袖の Yシャツに作業用ズボンと運動靴というシンプルな服装の、四十代前半の男性が出てきた。 「おい、いつまで―――おお、なのはか」 男性はなのはたちの姿を見ると、顔をほころばせる。 「あ、父さん」 「お父さん、忙しいところをごめん」 なのはの父で、翠屋の店長である高町士郎に、アリサとすずかは「今晩は」と挨拶する。 「ええと君たちは、確かなのはの教え子で…ティアナさんとスバルさんだったね」 士郎そう言って挨拶すると、スバルは「はい、そうです」と、ティアナは「覚えていただいて、恐縮 です」と言って挨拶を返す、士郎はしばらく考え込んだ後、なのはに言った。 「なのは、皆さんを家に連れてってくれ。夕食は、みんなで揃ったときにしよう」 「うん、分かった」 「あ、あの…お寛ぎのところを邪魔しては――」 ティアナがそう言いかけた時、士郎はそれをにこやかに遮った。 「いえいえ、娘の部下の方々でしたら、私の家族も同然ですよ。どうぞご遠慮なさらずに」 「あ、ありがとうございます」 ティアナは、多少緊張気味に士郎へ礼を言った。 数時間後、高町家居間の食卓には和洋様々な種類の豪華な料理が並び、部屋全体にいい香りが漂っていた。 「うわぁ~、おいしそう~」 「すごい…」 スバルとティアナは、ミッドチルダでも当たり前に食べられているものから生まれて初めて目にする料理 まで、技巧を凝らした様々なご馳走の数々に目を輝かせ、息を呑んだ。 「さぁ、召し上がれ」 士郎の左隣に座っている、幾何学模様のワンピースという服装と綺麗な顔のため、士郎と同年代とは思え ないほど若々しいなのはの母、高町桃子がにこやかにスバルたちへ言った。 「では、お言葉に甘えて…」 「いただきま~す」 ティアナは桃子に丁寧に礼を言い、スバルは、手を合わせながら快活に言って箸を取り上げた。 スバルたちがおいしそうに食べ始めたのを契機に、高町家の面々となのはの友人達も食事を始める。 しばらくの間、居間の全員は食事に集中して、会話が途切れる。 全員程よく胃が満たされ、落ち着いて来た時、桃子がスバルたちに尋ねた。 「スバルさんとティアナさんは、なのはの教え子なんですってね」 その質問に、ティアナが答える。 「はい、機動六課に所属していたとき、教導官として色々と教えていただきました」 「その時のなのはって、あなたたちから見てどう?」 「そうですね…」 ティアナは、フォークを置いて天井に頭を向けながら考えてから、答えた。 「厳しいですけど、基礎から順序立って教えてくれる、分かりやすい教導をしてくれる方…って感じです」 「あはは。ティアらしくていい答えだね」 スバルはそう言って笑いかけると、ティアナは顔を赤くして顔を伏せる。 「スバルさん、あなたはどう思った?」 桃子が尋ねると、スバルは真剣な表情で桃子を見つめながら答えた。 「私は…、初めて会った時からずっと憧れの方です」 スバルは、ここで昔を思い返すような、遠い目をしながら話を続ける。 「小さい時、私はなのはさんに助けて頂いて、その時に自分の力の無さを実感して、なのはさんみたいな 強い人になりたいって心の底から思って、それからずっと…今もなお追いかけてますけど、まだ遥か先の… 雲の上の人、そんな感じですね」 「スバル、それ持ち上げすぎ」 なのはは、顔を赤くして恥ずかしそうに言うと、桃子は微笑みながら娘を見つめた。 「あら、いいじゃないの。娘が人の尊敬を得られるほど立派になるなんて、母親としてこれほど嬉しい事 はないわ」 士郎も笑いながら頷く。 「そうだな。ちょっと前までは小さな子だと思ってたけど、それがあっという間に教官として人に尊敬される までになってるなんて、そうそうある事じゃないぞ」 「多分、我が家で一番の出世頭じゃないかしらね?」 ベージュのブリッジシャツにローライズスキニーデニムパンツという服装の、金縁の眼鏡が知的な雰囲気を 醸し出しているなのはの姉、高町美由希が箸できんぴらごぼうをつまみ取りながら言った。 「ああ、俺も美由希もそんな立場までは行ってないし、稼ぎも我が家で一番じゃないか?」 恭也が自分の境遇を憂えるように、腕を組んで難しい表情をしながら言うと、桃子は恭也の頭に手を伸ばし、 優しく撫でながら答えた。 「いえいえ、恭也も美由希も立派にがんばってますよ」 頭を撫でられている恭也は、恥ずかしそうに顔をしかめて、母親の手から逃れる。 「ちょちょっと母さん、もう子供じゃないんだから」 突然、それまで黙ってサラダを食べていたヴィヴォオが、士郎と桃子に振り向いた。 「士郎おじさんに桃子おばさんも偉いと思うよ、だって二人が居たから、ヴィヴィオはなのはママと出会えた んだもん」 「ありがとうね、ヴィヴィオ」 桃子はヴィヴィオの頭を撫で、士郎は張り切って腕まくりしながら宣言する。 「ようし、ヴィヴィオの為に今まで一番おいしいキャラメルミルクを作ってあげよう」 士郎の言葉に、ヴィヴィオも満面の笑みで返した。 「ありがとう、士郎おじさん」 「いやぁ~、実に幸せなそうな事で…」 「私たち、お邪魔だったかも…」 アリサとすずかが、気まずそうに縮こまっているのを見たなのはは、慌てて二人を宥めに入った。 「アリサちゃん・すずかちゃん、そんな事無いから」 食事が終わると、スバルは庭で恭也とシューティングアーツの手合わせを始め、ティアナは、アリサたちと ミッドチルダと地球の文化について色々話を始める。 士郎と桃子は、ヴィヴィオのキャラメルミルク作りのために台所へ行き、ヴィヴィオも二人について行く。 そしてなのはは、コーヒーの入ったカップを手に、縁側でスバルと恭也の手合わせを眺めながら、美由希と 雑談に興じていた。 「…なのはが、初めてヴィヴィオを連れてきた時は、上へ下への大騒ぎだったわね」 美由希がからかう様に言うと、なのはは苦笑しながら答え。、 「うん。管理局に入ってからの事を、総て話した時もかなりの騒ぎだったけど、あの時はそれ以上だった」 「でも、今じゃ一緒に飲み物作ったりするぐらい仲がいいんだから、良かったんじゃない?」 「うん。多分ヴィヴィオがいい子だったから、お父さんもお母さんも打ち解けられたと思う」 そう言って二人は台所の方に目を向ける。 台所からは、キャラメルミルクのいい香りと、楽しそうに話すヴィヴォオたちの声が聞こえてきた。 「で、クラナガンの方はどうなの? リンディさんから、分離主義勢力についてちょっとは話を聞いてるけど」 なのはは、顎に手を当てて考え込みながら話し始めた。 「最近、情勢が不穏になってきてる。魔術を使える人たちと、そうでない人たちの対立が段々悪化してきてて、 街中でデモが暴動になるなんて事が結構多くなってて…」 「そうなんだ」 「私も、時々暴動の鎮圧に呼ばれる事があるんだけど、正直言って気が乗らない」 そう言った時のなのはの表情に陰りが見えたのを、美由希は見逃さなかった。 「どうして?」 「それだけ今の状況を不満に思う人が沢山居るって事でもあるから」 なのははそこで一旦言葉を切って、空に目を向ける。 「ミッドチルダって、魔法以外の技術に対して本当に冷淡なの。魔術の技能を持たない人たちって選挙権がないし、 就職に関しても色々と制約があるから、彼らが怒るのも当然だって思う」 コーヒーを飲んで一息つけてから、再び話し始めた。 「暴力行為は悪い事だけど、ほとんどの人たちは自分の生活をより良いものにしたくて、間違っていると感じている 事を変えたいから、そうやって抗議している…そんな人たちの思いまで、一時の過ちとして片付けているような気が するの」 美由希は、なのはの肩に手を置いて言った。 「なのはは優しいね。昔、ユーノを拾ってきた時もそんな風に一生懸命だった」 振り向いたなのはを真正面から見つめながら、美由希は話を続ける。 「なのはがそう思うなら、同じように感じている人は他にも居ると思う。魔法の力を持たないけど、懸命に世の中の ために頑張っている人たちに正しく報われるようにしたいって思っている人が」 美由希はそこで言葉を切り、手合わせを終え、庭石に相対して座りながら話をしている、スバルと恭也の方に目を 向けながら話を再開した。 「その人たちと一緒になって、より良い方向に解決できるよう頑張るといいと思うよ。今のなのはならそれが出来る、 それはお姉ちゃんが保証する」 「そうだね。ありがとう、お姉ちゃん」 なのはは小さく微笑んで、空になったコーヒーカップを見つめる。 「ちょっと、新しいコーヒー入れてくるね」 そう言って立ち上がったなのはに、美由希は笑って手を振った。 台所で両親達と話をしながら新しいコーヒーを淹れ、居間に戻ろうと廊下に出た時、首に下げてあるレイジングハートが 点滅を始めた。 「どうしたの、レイジングハート?」 「マスター、八神はやて様から個人向け秘匿通信が入っております」 「はやてちゃんから!?」 なのはは急いで自分の部屋に行き、空間ウィンドウを開く。 「はやてちゃん、どうしたの?」 モニターに映るはやては、緊迫した表情で話を始めた。 「なのはちゃん、お休み中のところ申し訳ないんやけど、こっちでえらい事が起きてな」 「何?」 はやての話を聞いたなのはの表情が凍りつき、コーヒーカップを床に取り落としてしまう。 カップからコーヒーが溢れ、カーペットに黒い染みを作る。 「フェイトちゃんが…」 なのはは、呆然とした表情で呟いた。 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/kskani/pages/492.html
祝福の風 I reinforce you with my power. ◆MADuPlCzP6 それは小さな願いでした 『私の名はそのカケラではなく、あなたがいずれ手にするであろう新たな魔導の器に贈ってあげて頂けますか?』 それは先代リインフォースの最初で最後の願い そんな思いのこもった奇麗な名前をもらって私はここにいます 私は、私の名前は祝福の風・リインフォースⅡ 空を駆けるのはいつもこの名前と共に 湯気の篭る部屋の中、ひとつの命のために輝き続けた光がやむ。 魔力の明かりの消えた部屋に満ちるのは疲労と諦観。 魔導の力をもってして治療に当たった三人は肩で息をするほど疲弊している。 彼女らは持てる限りの力で重傷の体に立ち向かった。 しかしその力はスバルを救うのに少し足りない。 青い髪の拳闘士の手に力は戻ってこない。 人ならざる力を持つ彼女達。 しかし彼女達の力は人ひとり生かすにほんの少し足りなかった。 「なん…で……なんでっ!!」 なおもスバルの体へと手をのばすなのは。 その手に宿る柔らかい光は生まれかけて、すぐ消える。 温泉で多少回復したとはいえ、小砂、アスカ、冬月、ケロロと専門でない治癒魔法をかけ続けてきた消耗は大きい。 さらに種族の違うケロロの治療には多大な魔力を注ぎ込んだエースオブエースの身にはもう少しの魔力も残っていなかった。 スバルはまだ息をしている。 手の届くところに存在している。 だが彼女を救う術はもう自分の体のどこにもない。 目の前で、生きているのに………………救えない。 「スバル…スバル……………っ!」 悲痛な声が響く部屋に詰まっているのは落胆、悔恨、絶望、苦悩。 それはまるでギリシャ神話のパンドラの箱の中だ。 ケロロも冬月もトトロも、獣達も俯きあきらめの表情を浮かべていた。 しかし神話は指し示す。この世の災厄を詰め込んだ箱の中、その奥底には希望が眠っていることを。 彼女は休息を要求する体を無視して下を向きそうになる顔をくっと上げる。 その瞳は澄み切って、迷いなく前を見据えた。 停滞した空気に一陣の風を送るのは私の仕事だと。 再びスバルの体へ向けてその手から光が漏れる。 手だけではない。 腕が、足が、全身が、淡く発光をはじめた。 「リイン!?何をするつもり!?」 急激な魔力の発動を感じたなのはは驚きの声をあげる。 リインフォースは脂汗を流しながらつらそうな様子で、それでもにっこりと笑ってこう言った。 「リインは、リインフォースⅡははやてちゃんのリンカーコアのコピーして作られた本体を核とするユニゾン・デバイスです。 つまり、リイン自身が魔力の塊。 リインの存在維持を度外視すればもっと治療魔法の出力を上げられるですよ。 スバルを助けられるかもしれないですぅ」 そんなリインの発言にはじかれるようにケロロが声をあげる。 「存在を度外視ってぇことは消えちゃうってことぉ!?そんなのダメでありますよ!リイン殿!!」 「わたしはスバルの上官ですよ?上官は部下を導き守るためにいるですぅ。 今リインの持ってる力をスバルの為に使うのはちっともおかしいことじゃないですよ。 部下を持つケロロ『軍曹』殿ならわかるですよね?」 ケロロと言い合う間にもリインの体はどんどん光の粒子になって消えていく。 治癒の魔法を緩めぬまま彼女は語った。 主の危険を祓い主を守るのが魔導の器の務めであること。 我が主・はやての部下を守ることははやてを守ることと同じだということ。 自分は消えてしまっても、その思いははやてちゃんや機動六課のみんなの心に残るから、 だから自分は笑って逝けるのだということを。 そして、静かに伏せていた視線をなのはに移す。 「なのはさん、はやてちゃんに伝言をお願いしていいですか?」 「リイン…うん、わかった。はやてちゃんになんて…伝えればいいかな?」 「『祝福の風リインフォースⅡは、初代リインフォースに負けないくらい世界で一番幸福なデバイスでした。』 帰ったらはやてちゃんにそう伝えてくださいですぅ」 普段の彼女にはない、静かに柔らかな口調で言葉を紡ぐリインフォースⅡ なのはの目にはその姿にあの雪の日に消えていった魔道書の姿が重なる。 「うん。きっと…必ず伝えるよ」 だから、それ以外の返す言葉は見つからなかった。 リインはスバルに向き直る。 ふと眼に入ったスバルの胸元を飾る同僚にもひとつ、頼み事をした。 「マッハキャリバー、スバルが起きたらもう突っ走っちゃだめですよって叱ってあげてくださいね」 『Allright. 必ずそう言い聞かせます。リインフォースⅡ、貴方の旅路が幸せな物でありますように』 それを聞いたリインフォースは満足そうな笑みを浮かべた。 そして彼女はその体の持つありったけの力を振り絞る。もう腕から下は人の形をなしていない。 その唇が紡ぐのは感謝と別れの言葉。 「短い間だったですけど、本当にお世話になったですぅ。ありがとう、そして……………さようなら」 その言葉をきっかけに部屋は今までで最も皓い光に包まれた。 何も見えなくなるほどの強い、けれど優しい光に誰もが目を瞑らざるをえなくなる。 視界が利かなくなったことで敏感になった肌、それをさぁっとひときわ強い魔力によって生まれた風が撫でた。 それが、祝福の風の最後だった。 目を開けるとおしゃべりな空曹長はもうどこにもいなかった。 「っリイン!リイン…フォースっ………!」 なのはの瞳から、零すまいとしていた涙が堰を切ったように流れ出す。 あとからあとから湧いてきて、もう前を向いていられなかった。 ぽたり、ぽたりと頬を伝って落ちるしずくが地面を濡らしていく。 こつん とそこに涙ではない物が落ちる。 涙に歪む視界に映るもの、それは小さな小さなカケラ。指の先ほどの白銀色の剣十字。 そっと触れる。 このカケラははやての許につれて帰ってやらなければならない。 リインの最後の話と一緒に。 そう思ってカケラを胸に抱く。 そして、心優しい一等空尉はただ心優しい魔導の器を思って、泣いた。 「彼女のことは残念だが…本当によくがんばってくれたよ」 治療の済んだスバルの体に上着を掛けながら冬月は言う。 「我々にできることはもうすべてやりつくした。あとはただ…祈ろう」 そう言って老紳士は天を仰いだ。 そこに見えるのはただの天井なのに、その姿はたった今消えてしまった彼女を見送るようで。 小さな鞄から殺戮の島に降りたデバイスは光となって消えていった。 上官として、魔導の器として最も優れたやり方を選んで最後を迎えた彼女の光は 蒼天を行く祝福の風・リインフォースⅡの名にふさわしい、清廉な光であった。 時系列順で読む Back 統ばるーただ一人を助けるその為に Next ピエロのミセリコルディア 投下順で読む Back 統ばるーただ一人を助けるその為に Next ピエロのミセリコルディア 統ばるーただ一人を助けるその為に スバル・ナカジマ ピエロのミセリコルディア 高町なのは トトロ 冬月コウゾウ ケロロ軍曹